引きこもりで悪いかよ

昨日の出来事。夜、家の9歳児が一緒に遊ぼうと私の部屋にやってきて、私も割りと暇(というか常に暇)なので軽く了承すると、それはチャイニーズチェッカーという、六芒星のうちの1角を自分の陣地として、相手の陣地を自分の駒で先に全部埋めたほうが勝ち、といった内容のゲームであった。私ダメなんすよ…、勝ち負けを競うタイプのゲームって。絶対勝ちたいという執念が強すぎてヘトヘトになっちゃうの。戦略を考えて駒を進めるので手を決めるのにだいぶ時間がかかるせいか、いちいち9歳児が「こういう風に動かせるよ」ってアドバイスしてくんの。私のほうが明らかに有利な情勢だっていうのに。多分言葉がたどたどしいせいで私のことを妹分くらいに見ているのだ。あんまりしつこいんでつい"I know, I know, I know! I never need any your advice!!"、そう叫んだあげく、完膚なきまでに打ち負かしてしまった…。なんて大人気ない。9歳児に対する30歳の仕打ちがこれ。いささか恥じ入りました。
しかしねぇ、大変なのよ、9歳児の相手って。先だって一緒に道を歩いてたら引っくり返って死んでるゴキブリを発見し、ゴキブリ嫌いなんだ〜、と軽い気持ちで話したらその後永遠とゴキブリの話をされたのだ。「もし家に帰って部屋にゴキブリがいたらどうする?」「誰か助けを呼ぶよ」「誰も助けてくれる人がいなかったらどうする?」「それでも誰か呼ぶよ」「寝てる間に顔の上にゴキブリが這ってたらどうする?」勘弁してくれよ、想像するだけで死にたくなるじゃん、と思いつつ「多分悲鳴上げるね」「悲鳴上げて口を開いて、その口にゴキブリ入ってきたらどうする?」こんな調子。
そうだ、昨日ゲームする前なんかひどかったんだよ。彼女(9歳児)はどうも私のインスタント味噌汁をえらく気に入っているようで、初めてそのインスタントの味噌汁を見せたら「飲んでみたい」というので好きなのを選ばせたら、すかさず数少ない「かに汁」を選んでいったのだ!次にせがまれたときには良いやつを持っていかれると業腹なので選ばせずに普通の「赤だし」を手渡して飲ませたのだけど、昨日の夜はなにがあったかというと、夕食時よりも前に私の部屋までやってきて「味噌スープちょうだい」と言ってくるではないか。もうあと6個しかないっていうのに。私の大事な味噌汁がどんどん9歳児に貪られてゆく…。そんな事態は是が非でも避けねば、と思って「今はない」というと「じゃあいつくれるの?」少々言葉に詰まりつつ「…来週」「そんなに先なの…?わかった!じゃあ見るだけでも見せて!見るだけだから!」やだよ、絶対。見たら絶対持ってかれるもん。「スーツケースに入れてロックしてあるから無理」そう答えたらようやくあきらめてくれたのだった。かわいそうだとは思うけど、味噌汁に対する困窮度は私のほうが圧倒的に高いのだよ。諦めてくれ。
とまあ9歳児と私のとの間柄はこんな感じで仲良くやっている*1のだが、納得いかないことがひとつ。私よりだいぶ背が低くて120センチくらいしかないのに足のサイズが一緒なんだよね…。きっと大きくなるに違いない。
そうそう、今日の日記のタイトルの由来。面倒くさい中国人に出会いました。ヴァレッタでお昼を食べようと思ってカフェに入ったらウェイターが中国人で、マルタは東洋人が少ないせいか親しみを覚えたらしくしきりに話しかけてくる。少々面倒くさく思い、静かに食事させてくれよ、と思わないでもなかったが、それなりにフレンドリーな対応をしたのだ。ほら、だって私って大人じゃない? 当然でしょ。そうしたら調子に乗って自分の食事と飲み物を持って私のテーブルにやってきて「もう仕事終わったんだ、ここで食べてもいい?」だって。そんでひとしきり金がらみの話をされ*2、いいかげんウンザリしてきたので「もう帰らないと」と言うと「もう?こんなに早くに家に帰るの?」だって。ほっといてくれ。
挙句「僕も帰るから一緒に帰ろう」とかいってついてきて「夜は出かけないの?」「友達と出かけたりしないの?」「なんで夜でかけないの?」「友達いないの?」うるさいよ。引きこもりで悪いかよ。クラブとか行ってる場合じゃないんだよ、三十路は。家で本を読むのが一番の娯楽なんだよ。そして私は60番のバスに乗りたかったのに「僕はセント・ジュリアンに行きたくて、62番だとスリーマもセント・ジュリアンも通るから62番でいい?」どうぞ、お一人でご自由に帰ったらいかがですか、と思いつつなぜか従ってしまったのであった。バカだな〜、私。いい日本人ぶりたかったんだな。日本だったらこんな振る舞い絶対許さないのに、外国人相手だとつい「日本人っていい人たちなんだな」と思われたいあまりに相手のペースに乗りがちだよ。そんでバスに乗ろうとしたら私の分まで料金を払おうとしてきたのでそれは固辞し、不本意ながら横並びにバスに座ったのだが、あんまり話したくなかったので窓の外を眺めているふりをしていたら、彼はいつのまにか居眠りをしていたのであった。こっくりこっくり、って。
最後には「携帯の番号教えて?」ときた。もちろん教えるわきゃないのである。そもそも不必要にフレンドリーな輩って出し抜けに電話かけてきたりするではないですか。どこか遊びに行かない?とかいって。家でくつろいでいるときにそんな電話を受けるさまを想像してみると、おぉ嫌だ。私の安らぎタイムをじゃまされてなるものか。「携帯持ってません」そう答えると「えぇ!不便だよ!持ちなよ!」だから煩いって。
家に帰ってからホストマザーに「見知らぬ男から携帯の番号を聞かれたが、持ってないと答えた」と言うと「当然よね」と同意してくれたのだが、件の9歳児はひとしきり「わ〜い、嘘つき嘘つき!」と騒ぎたてた挙句、先だっての初老の男のキス強要のことも意識しつつ「マルタで人気者の美人さんね〜」と変な節つけて歌う始末。あぁ、きっとこの出来事と味噌スープ強奪未遂事件があったせいで、きっと私はゲームのときに容赦しなかったのだ。…いいわけになんないけど。
しかしだね、東洋人同士でなじみやすい顔立ちをしているからって安易に声をかけてくるのってどうかね? 中国人とか日本人とか韓国人って、あんまり気安い人っていないと思ってたのに、海外では。それとも彼はマルタ滞在2年でマルタ大学に通っている学生だったので、変に欧州文化に感化されてしまったのだろうか。わからんが、今週は面倒くさい出来事が多かった。やれやれ。

*1:つい先日などは、「大人になったら何になりたいの?」と聞かれた。もう大人なんだけど…。どちらかといと「もうちょっと若かったら何をしたかった?」の方が適切なのだが、わりと微笑ましい質問ではあった。彼女といると退屈しないので非常によろしいです。

*2:ホストファミリーにいくら払ったか、東京ではどれくらい稼げるのか、などを聞かれた。