言葉を発するときは正確に

家での仕事にも大分慣れてきて、そうするとやはり通勤がない分、在宅の方がラクでよいと思う今日この頃です。テレビで犯罪者の高校とか中学時代の文集を紹介するのはあんまりだと思いませんか? ああいうものを見せて『すでに子どもの頃から今回の犯罪へとつながる、某かの片鱗がみえる』とか思わせようという魂胆なのかもしれないが、子どもの頃に書いたものと現在のすがたをつなげようとするのは暴挙といえなくないですか? 私だったらイヤンなっちゃうなぁ。小学校の卒業文集とか持ってこられて、すでにこの頃からいい加減な性質があらわれてるね、と言われたら。だいたい昔書いたものって、その幼稚さゆえに今からしたら抹消したくなるような内容のことが多いじゃん。私なんか中学生の頃、『大学院には行かずに、大学卒業までには論文を書いて博士号を取得します』とか言ってたんだぜ。もう死にたい。大人になる過程でいろんな事を経験して、人間性はちょっとずつ変わってゆくものだろうに、子どもの頃の事を引き合いに出すのはズルくないか。
ところで先頃、新婚さんを自宅に招き、出した料理が大変喜ばれて私としてはとても嬉しかったのであるが、その際にとても引っかかるコメントを耳にした。新婚さんの夫の方が妻に向かって「負けちゃうね」と言っており、おそらくこれは料理の腕が、ということだと思われるのだが、負けちゃうってどういうこっちゃ。ふざけんな。己の細君を飯炊き女かなにかだとでもお思いか。負けちゃうとか言ってる場合じゃなくて、自分で料理の腕を磨けばいいだけの話だろう。家庭における料理の役割は女性側にある、とでも思っていない限り「負けちゃうね」発言にはなり得ないわけで、というのも男性側も当然やるべきものと思っていれば「ヨーシ! オレも料理頑張るぞ!」とか「オレの料理じゃ負けちゃうナァ」になるはずだし、料理は女の役割であるという思想のもとで私の料理をほめたのだとしたら、私としても大変不愉快である。オレを専業主婦だと思ってんのカッ! なめんじゃねぇ!! そもそもそんなに家事やってねぇ! 私という人間は、働きっぷりと家庭への貢献度を考えると全然専業主婦じゃないし、そもそも何がしたいのか自分でもよく分からずに生きているので、あまり『主婦』とか『料理のできる奥さん』みたいに他人に勝手に規定されると大変居心地が悪い。というわけでこの「負けちゃうね」発言はとてもよくないものだと思われる。これを言っても問題ないのは妻側が「家事は完璧にこなすから養って。専業主婦になりたいの」と言っている場合くらいだろうが、彼女はちゃんと仕事をしているのでやはりこの発言は本当によくない。なんといっても、「負けちゃうね」なんて言ったら傷つくでしょう。
ちなみに私は、男性にありがちな「料理ができない」という発言の意味がわかんない。できなくないだろ、その気になれば。「できない」じゃなくて「やる気がない」「時間と労力を割きたくない」ってことじゃないのか。本質的に料理をする能力がない人って、ほとんど存在しないと思うけど。言葉を発するときは正確に。あと気になるのは、嫌いな食べ物を目前にしたときの「食べられな〜い」という発言。食べられなくない。食品なんだから食べられる。それを言うなら「食べたくない」だろう。アレルギーじゃなくて単なる好き嫌いの話なんだから。言葉を発するときは正確に。