ガリア戦記

カエサル著 \735 岩波文庫 ISBN:400334071X
塩野七生カエサルびいきは有名で、それに対して問題視する向きがいるのは以前から知っていたが、これを読むことによって彼女を批判される側の根拠が若干分かった気がする。何しろ原文は2000年前のものだし、途中で散逸したりもしているだろうから、これ!といえる決定稿がないのだ。記述自体がそもそも間違っていたり、写本する際に間違ったりもしているだろうし、ゆえにカエサルの行軍について、どのような内容だったか可能性の高い順に話すことは出来ても、彼がどうしたとか、どのように話した、などなど彼女が記述するようには断定できないのであろう。塩野七生という人を通してよりドラマティックに事実が伝えられているのだ。
で、だから?って感じ。事実と多少違っていたって全然問題ないのだ、私に言わせれば。彼女がローマを心底面白いと思っているからこそ、それについて書いたものが面白くなるわけで、面白いからこそ多くの人が手にとって読むわけだろう。そうでもなかったらこんな、ローマを中心に見たら世界の果てにあるような国の国民がその歴史にたいして興味を持つわけが無かろう。で、別に日本人の、歴史の素人が若干ローマ史に関してバイアスかけられたとしてもどのような不都合があるというのだ。あの本によって興味を持つことの方が重要だ。より真実味のあることが知りたければそこから勉強を始めればよいのだから。ガリア戦記を読んでみて、一般人に対する「ローマ人の物語」の存在意義が分かった気がした。