文学フリマ再々考

昨日も書いたが自分たちの作品に対して臆面もなく面白いと断言できてしまう人たちの心理について考えた。彼らは他人に自分たちの作品を否定される可能性について考えたことがないのだろうか、それともその可能性すら存在しないと考えているのか。あれこれ考えていくうちにちょっと思いついたのだけれど、彼らも流石に自分たちの作品が素晴らしいと思っているわけではなく、仲間内で楽しく文学やってる自分たちが面白いのではないだろうか。要するにサークル活動の楽しさか。見ていて全然本気さが足りなかったのだよ。やってることがゆるゆるなのだな。もっと真剣に面白いものを作って欲しいものであるが、別段彼らはそんなものを目指してはいないのだろうから余計なお世話だろう。彼らは彼らだけが楽しければよいのだ。私も私だけが楽しければよいので私にとっては彼らの楽しさなんかどうだっていい。
しかし中には川本喜八郎にインタヴューし、彼の新作アニメーション(なんと折口信夫死者の書だ)について紹介しているグループがいて、それは結構面白そうだったし真剣さも伝わってきたのだが、冊子を見ている私にまたしても「良かったら是非」と言ってきたのだ。だから982円しか持ってない人間にそんな700円もするようなもの勧めてこないでよ。無理だよ。
で、私が買った唯一の本は一体どんなもんだったかというと、表紙はかなり洒落ていた。そしてそのブースは非常に地味であった。冊子を積んだだけで他に人にアピールするようなものはない。男性二人で店番(?)をしており、その前に私が立っても何も言ってこないのだ。こちらも無言でその本を手に取ったのだがあまりにも何も声をかけてくれないので、ひょっとして私はこの世界では暗黙のルールとなっているような作法を間違ったのであろうか、彼らの無言は実は「お引取りください」の合図なのではないか…。俄かに不安になった私は内容をろくに見ず逃げるようにその場を立ち去ってしまったのだが、そのためにその本に対して更に興味が高まってしまったのだ。出品されている冊子全てを集めた立ち読みスペースを発見したのでそこで件の冊子を立ち読み、やや、これはやはり面白そうだぞ、と食指が動いたので勇気を振り絞ってもと来た場所に戻って購入したのだった。値段も300円だったので所持金982円の人間にもゆとりをもって購入することが出来た。印象深かったのは私がお金を払った瞬間だ。その店番していた男性が実に嬉しそうな顔をしたのだ。自分の作品を知らない人に読んでもらえる!そんな喜びに満ちた素敵な笑顔であった。なんだかこちらまで幸せになったよ。
で、読んでみると当然ながら素人の作品群なわけである。しかしこの中にすさまじい作品が一つ含まれていた。なんなんだ?あれ。今までこんな文章読んだことない。かなり訳の分からない作品なのにぐいぐい引き込まれていく。非常に短い作品であったが、強烈な印象を私の中に残した。通しても3回くらい読んでしまったし、好きな部分だけなら10回くらい読んでしまったかもしれない。一体どういう人間がああいうのを書いているんだろう。興味深い。