ジュンク堂にてトークセッション

金井美恵子「スクラップ・ギャラリー」出版記念のトークセッションに行ってきた。初の生金井美恵子。彼女の姉の金井久美子さんも登場した。30分前には会場に着いていたのだけれど既に結構な人が会場に入っていたので、こりゃもう良い席には座れんかも、と観念したのだけれど何故だか私が前列中央の席を占めるべく皆ほぼ一様に後ろから席を埋め始めていた。もう、皆恥ずかしがりやさんね!私はそんなことでは臆さなくてよ!著者の正面から凝視しちゃうから!
さてさて昨日の日記にもあるように今日は明け方家に帰ってきた。昼間寝たとはいえ十分ではない。よってセッションが始まる前に最早眠くなってしまったワタクシである。どうしよう意気揚々と前列に乗り込んだものの話の最中に居眠りしたら本当にバカみたいだ。「スクラップ・ギャラリー」の予習?そんなもんする時間あるわけないだろう。ああ、本当に私は学生の頃から変わらない、用意周到に準備するなどという事は不可能なのだ、とはらはらし始めたのだが、いざ話が始まってみると面白くて居眠りなんかしてる場合じゃない。大抵の絵画は美術館などで白い壁の上に飾られており、画集などでも白い紙面に写真が掲載されているのだけれど、この本ではスクラップ感を出すために敢えてページの地に色をつけたそうなのだけれど、やってみると殆どのものは地が白くなくても問題なかった、合わないのはポロックとベーコンくらいのもの、と。お二人ともポロックもベーコンもあまり好きではないらしく(その辺りのことは本を読めば分かるようになっているそうだが)、事ある毎にこの二人の名前を出してくるので面白い。扉ページに使用している写真などにもいろいろ考えがあった上で選んでおられたのだけれど、バルテュスのページでは金井家の猫のトラさんのお写真が使われていた。本当は彼の絵の中に登場する猫のどれかを使いたかったそうなのだけれど、バルテュスの絵画は部分的に使用することが許されないそうで、代わりにトラさんの登場となったそうだ。ちなみにマティスなんかも部分使用できないそうです。
トーク後の質問の時間も本当に面白くて、「姉妹で仲良く暮らす秘訣は?」という質問に姉の久美子さんは「こういう質問する人ってきっと兄弟と仲悪いのね」と。美恵子さんはただ「我慢」とおっしゃっていたが、そのあとこんなエピソードも。飼い猫の具合が悪くて現在週に2回は「猫医者」に通っているそうなのだが、そのお医者さんのうちで飼われている犬と猫がとても仲がよく、お医者さんに向かって「仲が良いんですね」と言うと相手はなんでそんな当たり前のことを聞くのか、という顔をしたそうだ。それから暫くして、医者に行ったときにジュンク堂で姉妹でセッションに出る話をしたら医者から「仲が良いんですね」と。だめだなぁ、こんな文章じゃ何が面白かったのか全然伝わらないよ。まあいっか、これ私の日記だし、私さえ分かってればそれで十分か。
それから暫く質問が続き、大体出尽くしたような雰囲気であったので、では私も、と身を乗り出し、「小春日和」の続編を読んだところ主人公の桃子は30歳で独身で猫飼ってて学歴だけは高くて無職ですが、私も来年30歳で猫飼ってて無駄に大学院出てて無職なので彼女のその後がとても気になり、人事とは思えないのですけれど再び続編などを書かれるご予定はないのでしょうか、と捨て身の質問をすると今まさに書かれているとの事。短編だけど。今書店に並んでいる小説トリッパーに掲載中だそうだ。聞いてよかったなぁ!本当に楽しみだ。早速会のあとに雑誌コーナーに立ち寄って見てみたが、話の途中だったので購入はせず、図書館で頭から読むことにした。桃子、30歳よりかもうちょっと年をくってて遂に就職させられるのだけれど嫌がっているそうである。興味深いね。「文章教室」の厭味なヤツも登場しているそうである。著者自身も、読んでて本当にイヤになるほどの厭味っぷりだそうだ。金井美恵子のあの辺りの作品がお好きな方は必読ですね。
会のあと、書籍購入者はサインがもらえるという事だったのだが、私が購入したのはジュンク堂じゃなくて東京堂。しかもバッチリ東京堂のカバーかけたまま。遠慮?しませんよ。ちゃんとサインもらってきました。私の名前を中央に、左手に金井美恵子、右手に金井久美子と、二人の名前に私の名前が挟まれる配置に。もうこの本は大事に大事に扱って、決して古書店に売り払ったりはしません!昨日飲んでる最中に酔っ払って椅子から一回落としたけど。