ショーペロ

ショーペロとは、イタリア語でストライキのことである。私はこのショーペロを、一般に通用する言葉にしたい。なんでかというと、イタリアに住んだことのある人ならまず笑うネタがあるのだが、これがショーペロに馴染みがないと全然笑えないんだわ。このネタのおかしみを伝えるためにもショーペロ普及に尽力したいと思う。
ショーペロといえば、イタリア滞在中に私がアホ面さらしてバスを待っていたときのこと。颯爽と歩くお兄さんが動きだけは格好良さげで顔立ちはそうでもなかったのだが、機敏な動作で私の目の前を歩き去る瞬間に「ショーペロ!」と叫んでいった。はぁ?とか何とか文字に出来ないような腑抜けた声を出したものの彼の歩みをゆるめる事は出来ず、ヨロヨロと2〜3歩進んで右手を差し出し昭和の女が去ってゆく男を後から縋る様な雰囲気で彼の姿を追うと、大分離れたところから再び、顔だけくるりと私のほうに向けて「ショーペロ!!」と叫んで去っていった。つまり私はストで来るはずもないバスをひたすら待ち続けていたのだった。
こんなこともあった。私はイタリア人のおばあさんの家に間借りして住んでおり、彼女がテレビを見ていないときに勝手に見る自由があったのだが、お昼過ぎのニュースの時間に何故か白黒画像のえらく古いお笑いが始まったことがあった。テレビ欄を見て確認したけどやはりその時間はニュースであると書いてある。一体どうしたことかと思っていたら大家さんがポツリと一言「アナウンサーのショーペロだね」。唖然としつつも呆れながらアナウンサーまでショーペロするのかよ、などと言ったら「全ての職業に平等にショーペロを起こす権利が与えられている。警察官だってショーペロを起こす」との返答が。
ショーペロがあまりに日常の出来事なので、かかる事態に誰も動じない。そんなイタリアはなんだかちょっとステキだわ、と思った私はおかしいでしょうか。「こういう立場の人間は、こうあるべき」みたいな思い込みというか縛りがないところが自由でよろしいと思ったわけなのだけれど。 byふ231*1

*1:うちのたびさん(ネコ)がキーボードの上を通過した後に残された文字列がこの「 byふ231」。面白かったのでそのまま掲載。