オバサンたちのバスツアー

毎週一度プールに通っている私の母は、新年会がわりにプールのお仲間とバスツアーに行くことにした。このチョイスがいかにもオバサン然としていて、ある意味微笑ましい。5550円という格安ながら半端な料金設定で、私などはそこまでするならいっそのこと5555円にしていただきたいと思う。ミステリーツアーということで行き先が分からないらしく、パンフレットの惹き文句には
「途中で○○湯に入ります」
「帰りにはお土産に○○○を1本お付けします」
と伏字だらけ。あらあら温泉にまで入れるのね、と大喜びの母とそのお仲間であったが、旅行会社から知らされたところによると「○○湯」は「あし湯」だったそうな。つまり「足湯」ね。大分がっくりきたらしい。その話を聞いてオバサンたちがはしゃいでいたところに水をさされてシュンと落ち込む様を想像してしまって私は少し笑ってしまったが、「○○湯」で「足湯」はあんまりじゃあないかとも思う。
父などはその料金設定で温泉まで期待する方が間違いだ、お土産の○○○だってそんな良いもののはずがない、と冷静な意見を言っていたが、オバサンたちもさすがに察したらしく、○○○は山芋かなんかじゃないかとの意見がでたそうだ。「山芋を1本」ね。シビアな父は、山芋でも割に合わない、きっと「○○○」は「ごぼう」だ、ごぼうに違いないと断言。ごぼう1本貰うくらいなら、お土産なんか要らんわね。果たしてお土産の「○○○」はなんだったのか、ツアーから帰った母に聞くと、
「シャケが1本付いてきた」
オバサンたちの喜ぶ様が想像に難くない。あらシャケだわ、得したわね、って。シャケ1本食べきるのは結構難儀なことだと思うのだけれど。それが自分にとって本当に必要かどうかよりもオバサンたちには「得した感」の方が重要なのであろう。決して同行したくはないけれどバスツアーに色めき立つオバサンたちを想像すると、ちょっと面白い。