大人デビューの日

アテネフランセでの初のレッスンがあと5分で始まるというタイミングで早速受講したことを後悔し始めたのは何故かというと、50分×3などという長丁場の授業をまともに受けるのが相当に久しぶりであるからで、この期に及んで何を言うかと自分でも思ったが私、学校の授業とか嫌いなんだった。サボれるものは極限までサボりたい。しかしこれは自分で学費を捻出しているわけで、そんな理由でサボタージュするくらいならば最初から受講する必要など無いのであり「サボる」というかつての私には非常に馴染みのある行為を、今の私がとった場合には自己矛盾に陥るという事で葛藤が生じつつ「授業ヤダ」「授業ヤダヤダ」と思っているうちに教師のブランドン(仮名)が教室に入ってきてなし崩し的に授業開始。終わってみたらあっという間の50分×3でした。
授業の後には雑誌「LOUPE」を展示しているギャラリー・美篶堂に向かう前に神保町のティーヌンでタイカレー、のつもりが気が変わってパッタイ。グラスビールが200円で安かったので一気飲み。いやぁ、ビールが旨い季節になってきましたねぇ!上機嫌になりつつお茶の水方面に戻り、神田川沿いにある美篶堂へ。美篶堂の場所はすごい。中央線に乗っていると神田川沿いに「淡路亭」っていうビリヤードの店が見えると思うがあの並びである。あの並び、淡路亭のほかにももう1軒ビリヤードがあり、私の人生におけるビリヤード初体験の店はそのどちらかの店であった。大学生のときの話だけど。院試の勉強を同級生としていたはずだったのだが、何故か一緒に勉強していた東大生に気づいたらかのビリヤードの店に連れて行かれたのだった。後に偶然知ったのだけれどこれらの店はかれこれ40年位前、私の父が大学生の頃には既に存在していたらしい。古いはずだよ、店構えが。とにかくそんな並びにある美篶堂だが、素敵な店であった。製本を習えたりするんだよ。和とじ本とか上製本とか。すごい楽しそう。その店の一角にギャラリースペースがあり、そこで雑誌「LOUPE」の展示をしていたというわけ。中身はまだ読んでいないので何とも言えません。しかしデザインは素敵です。
ここまでの話というのは実はどうでもよい話で、私にとっては今日は結構一生記憶に残るような大イベントがあったのであった。20代半ばくらいから30歳になったら記念に本物のジュエリーを購入しようと思っていたのだよ。で購入したのが今日というわけ。三十路倶楽部の正会員になれるまであと3ヶ月少々あるわけなのに何故今日購入かというと、理由はあるのですがそれはここでは書けません。気になる人は個人的に連絡してください。などと書くと意味ありげですが全然深い意味はありません。購入時期の理由をここに書くと若干人様に迷惑をかけるので割愛、ということです。30歳を記念するジュエリーは誕生石であるペリドットを使ったものと決めており、ボリュームもないとイヤなので長らくカルティエのタンクリングにしようと思っていたのですがタイミング悪くここにきて廃盤。どうしたものかと思っていたら個人的に一番思い入れのあるホアキン・ベラオでえらくボリュームのある美しいペリドットのリングがあるじゃないですか。しかも去年の新作ということで、それ以前はペリドットのリングはなかったらしい。ホアキンとはもう学部生の頃からのお付き合いで、お店の方で一人いつもとても親切にしてくださる方がいて、私は彼女の追っかけをするみたいにいつも彼女が勤務している店舗で購入しているのだけれど、本日も彼女に接客していただきました。だってさ、同じものを購入するにしてもさ、こちらの好みをよく分かっていて、かつ決め細やかに気を配ってくれる人から買ったほうが嬉しいじゃないですか。よく考えたらこんなに高い買い物は人生で初だったわ。自慢げにそのリングの写真をアップしたいとも思うのだけれど30歳になるまで我慢しようと思います。ホアキン・ベラオの素晴らしいところは言うまでも無いけどそのデザイン。アクセサリーとかジュエリーとかそういうくくりを超えて最早アートの域だと思う。リングつけてるというよりは寧ろオブジェつけてるみたい。本当に美しい。こういうの、他には全然ないですね。最高です。最高の接客を受け最高のジュエリーを手にし、最高の気分のまま店をあとにしてルパンに直行。
ホアキンからルパンはだいたい30秒ほどの距離。かねてから30歳成人説を唱えているので成人記念ということで、リングを買ったらルパンに行こうと決めておりました。成人したからお酒が飲める、とか何とか思いながら。3月の「さわやかサーティーズ」以来2度目のルパン。初回時には入り口の扉を開ける役目を譲り合っていた私ですが今回は違います。余裕で入店ですよ。そして前回なかなか注文を聞いてくれなかったお店の年配の女性に対しても、彼女の意見を聞いてから注文せねばならぬとの教訓を得ていたのでスムーズに行きました。カウンターに座りましたよ。1杯目はなんだったかな。ジン・バックか。2杯目は彼女が「坂口安吾のお気に入り」と積極的に勧めてきたのでゴールデン・フィズ。これとても美味しかったです。隣に座ってた若そうなにいちゃんが私とその女性が話をしていると会話に入りたそうにして、実際にそうしてきたのだけれど結構不思議な人だった。何をやって生きているのかよく分からない風貌で、ルパン慣れしている風情だったけれど「今日で2回目」らしいし。いきなり年を聞いてくるから何だと思ったのだけれど聞き方も妙で「先生おいくつですか?」だって。「三十路です」と答えたら「大先輩じゃないですか!」って。おいくつなんですか?と聞き返したら2〜3秒逡巡した挙句「先生よりは下です」だって。答えるのに迷うような年頃なのだろうか。結局彼はよく分からない、謎のまま「もう1軒飲みに行く」と言って去ってゆきました。謎だ。
その後まだデパ地下が空いている時間だったので適当にサラダ、惣菜の類を買って帰り飲みなおし。ホラ、成人だから幾らでも飲んでよいのです。こんだブルゴーニュね。赤ワイン。モンジャール・ミニュレ、結構好き。これを読んでる人にとっては面白くも何ともないでしょうが、私はえらく満足した楽しい1日でしたよ。早く30歳の誕生日が来ないかなぁ。そうしたらもっと本格的に飲むのにね。