ぶよよ

先週、母と一緒に池袋のジュンク堂に行った時の事。
「ぶよよない? ぶよよ」
なんのことだか皆目分からん。なにそれ、と聞いたら、いろいろ地域の情報が載っているヤツ、とのこと。るるぶのことか…。おかあさん、それはるるぶと言うのだよ、と教えてやると、
「分かった! じゃあ店員さんに聞いてくる! るぶぶね、るぶぶ」
いったいどういう才能なんだか。もともと巧みに物事を言い間違う才能には恵まれていて、うちのネコのたびちゃんのことも“tabi”の“t”と“b”は言い間違わないのだが、なぜか母音を間違う。これまでにあった間違いをあげると、『タバ(束)』『テバ(手羽)』『トビ(鳶)』などと、母音を間違うだけにしてはちゃんと存在する言葉に間違うので結構な才能だと思う。たびちゃんがうちにくる前にはトラというすてきなネコを飼っていたのだけれど、そのトラのことも『タラ(鱈)』『トロ』『トリ(鶏)』『テラ(地球 竹宮恵子か!?)』などと言い間違っていた。
人名の事もよく呼び間違っていて、私は子どもの頃からよく『トラ』と呼ばれていた。そしてトラにたいしてもたびちゃんにたいしても私の名前だとか兄の名前だとか、上に上げたような母音のバリエーションだとかで呼び間違っており、ネコも賢いもんでどのような音声で呼ばれても、自分が呼ばれているな、と察するとちゃんと反応するのであった。ネコにまで気を使われてるんじゃん。ちなみに甥っ子にも『タビ』と声をかけるし、たびちゃんには甥っ子の名前で呼びかけたりもする。
かつて私が大学生くらいの頃に、大学から家に帰ってくると母の友人の田中さん(仮名)がお茶を飲みに遊びにきていて、つきあいで私も世間話などをしていたのだけれど、その時に、
「ちょっと聞いてくださいよ、うちのお母さん、私の事すぐトラって呼ぶんですよ」
などという話をしたら田中さん(仮名)に、
「知ってるわよ、私もトラって呼ばれたもの」
と言われた。すごいなぁ、母さん。近所のおばさんもトラ呼ばわりか。ちなみにたびちゃんは母音のバリエーションだけでなく、『たびちゃん来たよ』と言おうとして『メール着たよ』と言われた事がある。最早実体すらないあやふやなものになってしまった。飼いならされたネコとはいえ、それなりに気苦労は耐えないものである。