シベリア鉄道夢想

シベリア鉄道に夢中である。かねてから憧れてはいたのだが、旅行人のシベリア鉄道特集号を見ていた際にシベリア鉄道のコンパートメントの実際を知って、この個室にどこの誰とも知らぬおっさんと数日間同棲はかなりキツい。かつてムーンライトながらに乗った時にとなりのオヤジがセクハラオヤジで、こうみえてデリケートにできている私はストレスで胸が苦しくなり、乗務員が改札に来た時には息も絶え絶えに『となりのオヤジがセクハラなんですけど…』と申し出ると、その乗務員は一瞬『どうしよう』という困惑の表情を浮かべながらも結果的には隣に誰もいない席に案内してくれたおかげで恐怖の一夜を免れたのだが、その経験を鑑みるにシベリア鉄道なんて一晩じゃあ逃げられないものに自分を追い込むのは得策ではなかろう、積年の想いはあれどここは諦めるのが賢明、などと一度は思ったがやはり思い直し、たるんだ精神に喝を入れるには丁度いい、どんどん追い込んでやれ、と決意した途端にシベリア鉄道熱がヒートアップ。今すぐにでも乗りたい気分だ。
シベリア鉄道にはウラジオストクから乗るのだが、ウラジオストクには富山から船で向かいたい。ロシアに向かって出航する船に乗った私のイメージは、なぜか『出荷』という言葉が似合う。ロシアへと出荷されてゆく私。貨物か。モスクワへと一気に向かうのは疲れるし、途中お風呂にも入りたいから、ここはやはりイルクーツクで下車すべきであろう。それにそんな機会でもないとイルクーツクなんて一生行く機会がなさそうだし。モスクワに着いたら地下鉄三昧だ。モスクワの地下鉄駅は凄い。どう凄いのかは、ここでは説明できないが。
いいなぁ、飛行機使わずに欧州入りしたい。いいなぁ。シベリア鉄道。来年こそ決行するか。また仕事辞めて。私はほんとに仕事を辞めるのが得意だなぁ。人間誰しも特技があるというけれど、本当だね。そして仕事を辞める事を考え始めると妄想旅行が止まらない。というかそもそも旅行のために働いていると言っても過言ではない。どうして私はこうも全うな社会生活を送るのに不適切な体に生まれてしまったのだろう。ハンディキャップじゃん。楽しいからいいけどさ、別に。