しゃぶせんにて

銀座コアに入っている『しゃぶせん』は、ランチに限っていうと非常に安くしゃぶしゃぶが食べられる上に美味しく、店の人々のきびきびとした接客が清々しい、素晴らしい店なのだが、今日は吃驚したよ。カウンター席でしゃぶしゃぶを食べていたところ、私の隣に座っていた男性客のところに店の人が来て『大丈夫ですか』とかなにやら話しはじめて、つい気になって様子をうかがうとその男性客、ゴマだれをはね飛ばしてしまったようで懸命にスーツを拭いているのであった。ということは至近距離に座している私にも被害が及んでいるのでは、と衣服を確認すると果たしてゴマだれの飛沫がところどころ飛んでいた。食べるのに夢中で全然気づかんかった。そして、店の人がその男性客に声をかけなければ、その日一日中ゴマだれつけたしみったれた姿で銀座の街を歩く羽目になるところであったよ。ゴマだれ臭させながらジュエリー・ショップに行くのは、嫌なことだなぁ。で、店の人はタオルを持ってきて私の衣服についたゴマだれを丁寧にぬぐい去ってくれ、店の人が悪いんじゃないのに『どうもすみません』と。確かに気分の良いことではないけど店側には一切落ち度がないし、ゴマだれはね飛ばした張本人に嫌な顔をしたところで自己嫌悪に陥るのは目に見えているのであんまり気にしないようにしていたのだが、帰り際に店の人にお詫びと称して益子焼の湯呑みを二ついただいたので吃驚。もともとここの店のサービスは非常に気分がよいと思っていたのだけれど、よもや店側に何の責もない一件についてお詫びをもらうとは思わなんだ。すごいね、しゃぶせん。一人1500円くらいの安いランチしか食べなかった客にこの高待遇。恐れ入って思わず『次からはもうちょっと高いの食べます』と口走りそうになった。思わぬ待遇に動揺してしまう己の貧乏くささに失望。