初日の日記

なんかもう初日から濃かった。成田マレーシア間の飛行機では作務衣を着て髪を後頭部で一つにまとめた、なんというか浪人風情のおじさんが隣に座って、きけばインドで日本語教師をしているというのでインドのいいところを尋ねたら「タージマハルにいったら建物にはちみつぶらさがってんの!」と言われ、この「はちみつ」というのは文脈から察するに蜂の巣だと思われるのだけれど、この人に日本語おそわってるインドの人達は大丈夫だろうか、と心配になったり、寝ている時以外は常に両足貧乏ゆすりをして、小刻みとは言え長時間貧乏ゆすっていられるとは、結果としてめちゃくちゃ足腰鍛えられてるんじゃ、と思わせるおじさんがいたり。でもって私はインドに向かっている今日と言う日になってもまだ、なぜ自分がインドに行く事にしたのかが分からなくて、自意識の強さゆえに悩む思春期の青少年の様に自省したりして、それに加えて自己を客観視してみると仕事休んでそこそこ大きなお金を使ってまでしてインドに行ったりしてんのに自分の行動の根源が分からんのは相当バカみたいであると自嘲したり。機中で暇なのでガイドブックを繙くと実際にあったトラブル例が掲載されており、「日本人の夫婦がインドに不法滞在。パスポートもすでに失効しており、それがバレて日本に強制送還」という内容に対して編集部が「不法滞在やパスポートの失効にはならないように絶対に気を付けよう」とかなんとか役に立つんだか立たないんだかよく分からんコメントをつけていたりした。こんな内容がガイドブックに載ってしまうインドってどんな国なんだ。
空港の送迎関係でトラブル多発のインドであるけれど、そこは問題なくクリア。で、ホテルに向かって車で移動し、しばらくしたところで車がたくさん路上駐車しているエリアにでたのだけれど、その車にまぎれて牛が十頭かそれ以上か、さも自分も車みたいな顔しちゃって路上駐車(っていうか路上駐牛か?)していたのだ。あれには驚いた。おまえは車じゃないだろう、車のふりをするな、車のふりを。牛が路上にいるイメージは勿論あったのだけれど、まさかあんな大群でいるとは思わなかったのだよ。
で、ホテルに到着すると部屋まで案内してくれたのが、なぜかホテルスタッフが2名に空港送迎の男性で計3人。断っておくが私の荷物が多くて重かったわけではなく、バックパック1個である。そしてそのバックパックすらも私が自分で背負っていた。つまり例の3人は手ぶらである。たかだか部屋に案内するのにそんなに人いらないだろう。かえってエレベータが狭くなっちゃってたし。部屋についたら凄い勢いで3人が3人とも勝手に部屋の説明をし始めて、私も誰を相手にしていいのか分からず混乱し、日本語通じるのに下手糞な英語を喋り始めてしまい、私の混乱を察した彼らはこちらをなだめるようにまた3人口々に何かを言って、やっぱり何をどうしたらいいのか分かんない。なんだかよく分からないうちに3人はいなくなっていたのだが、結局最後までなぜ案内が3人もいたのかは不明のままである。
で、やっと部屋に一人になって少し落ち着いたところ。落ち着いたと言っても部屋の鍵が内側からボタンを押してかけるタイプの鍵でセキュリティの面であまり安心はできないのだが。これかー、以前どこかの掲示板でインド一人旅に慣れた女性が「シングルルームに宿泊だとかえって不安」と言っていたのは。ドミトリーだったら部屋に確実に誰か他の人がいるけれど、シングルルームに夜中押し込まれたら一溜まりもないもんな。ドアチェーンすらないし。冷静に考えると怖過ぎる。明日、無事に日記がアップできてなかったら私は死んだか、致命的なダメージを加えられたと思ってください。