地元の人々と親交を深める

昨夜9時に寝たのに起きたの8時ってどういうこっちゃ。
ホテルで朝食をとっていると、昨日の電車で隣に座っていた英語ペラペラ・ウズベク人の兄ちゃんに再会。イギリス3年留学してたり、1泊料金がウズベク人の平均月収並のホテルに泊まってたり、育ちがいかにもよさそうなので『兄ちゃん』なんて呼ぶのは適当ではないのだが。
彼いわく、私が昨日見て感激したドームは、実はドームなんかじゃなくフラットで、ペイントによる目の錯覚だとか。衝撃的。も一回見に行きたい。「いいガイドを雇った方がいいよ」って、すみません貧乏かつコミュニケーション能力低くて。親しくない人と長時間一緒にいるのは苦痛なんでね。他にはティムールの墓を暴いたソ連の逸話とか、イギリスの観光名所とか色々教えてもらい、「イギリスには日本人留学生が山ほどいて、彼らは文法もライティングもパーフェクトだけど全然喋れないよネ☆」と言われた。マルタでも言われたこの言葉。日本人は英語コンプレックスが強くてね、ほんと喋るときナーバスになるから私もまさに今つらい、とかなんとか言うと「仕方ないよ、マザータンじゃないんだからネ☆」と慰めてくれた。そういうあなたもマザータンではないですが随分とお上手ですよね。どうせ私は何年経ってもカタコトの域をでない。
一人旅はこういう出会いが楽しいな。彼はさすがに洗練されたインテリ風だけあって、4番目の妻にスカウトしてきたりしないし。アドレスを交換して別れた。
朝は雨が降っていたものの、朝食後に晴れてきたのでもう一度レギスタン広場に行き、写真を撮ってから駅へ。無論格安乗合タクシー。電車に乗ると今度はコンパートメントじゃなく新幹線タイプで、しかしテーブルと液晶テレビが付いている。車体と座席はボロの割に設備は充実。乗るなり早速おっさんに話しかけられた。しかしこのおっさん、多分私より大幅に若い。老け顔だけど肌が20代前半だ。そして「ハウ・オールド・アー・ユー」なんて聞くんだぜ。ハウ・オールド。どれくらい老いているか。切ない質問。
こっちの料理は大量の油と、スパイスを駆使しているので胃に大打撃である。実をいうと昨日から折りにふれて胃が痛い。決して悪い味じゃないんだが、スパイスがなぁ。私の胃は辛さよりもスパイスに弱いらしく、これまでに2度、死を覚悟し、うち1回は救急車に乗った。外国で救急車に乗る事態は避けたいものである。
どうでもいい事だが、隣の席の、今度は真性のおっさんと携帯が同じだった。同じですよ、と差し出し見せてみようかと思ったが、だからなにっちゅう話なので自粛。
昨日11時間も寝たのに電車に乗ると眠くなるのはどういうことかね。大分ウズベキスタンになれてきた。なので寝ます。
しばらくしたら大学生の男の子に話しかけられた。英語の勉強してるので練習させてください、だって。生憎だったね、相手が私で。練習なんかなりゃしない。だってさ、確かに彼の英語力は日本の義務教育レベルだから要練習なんだけどさ、なんか知らんが私もつられて義務教育レベルになってんだよ。
「日本について教えて下さい」
「東京はとても大きい都市です」
「将来外国旅行をしてみたいです」
「イタリアはとても美しい国です」
なんだこの教科書から抜き出したような会話は。ペラペラ兄ちゃんと喋った時はじゃあつられてペラペラになったかというと、これが相手の英語力に気押され焦り「インディアン嘘ツカナイ」みたいな喋りになってんだよ。うまくいかないねぇ。
話しかけてきた男の子は連れが4人いて、彼らは英語を介さないらしく彼を指差し「あいつ英語喋ってんぜ」みたいなことを言って冷やかしていた模様。何言ってんのか分からんから空想だけど。しかしアングリツキとか言いつつ似やつき指差してたら十中八九間違いない。その似やついてた子はお調子者らしく「日本にボクのこと連れてってよ」「ブハラに着いたらデートしよう」とか、英語を介す子に通訳させんの。おめぇ英語喋れねえべ! どうやって会話すんだ!
ブハラに到着し、市街までの行き方を彼らに尋ねると、自分たちも市街に行くから一緒に行こうと言ってくれ、ついてくとそれは私愛用の乗合タクシーではなくちゃんとしたタクシー。しかも私のホテルの前までわざわざ行ってくれて、タクシー代もおごりだった! なんていい子たちなんだ! そして貧乏ですみません。普通に乗合タクシー(乗車賃約24円)で市街に出る予定でした。だってタクシーだと300円くらいかかるんだもん。高い。
彼らの車が見えなくなるまで手をふり、ホテルにチェックイン。ちなみに目の前に止まってくれてたのに気づかず5分ほど道に迷い、10歳くらいの女の子に道教えて貰いました。荷物を部屋に置いて街を散策。ここは完璧に旧市街らしく、道は細く建物も数百年前のままといった趣。土産物屋の押しの強さはサマルカンドより上で、英語ペラペラの15歳くらいの女の子に拿捕された。ブハラでは何か買おうと思ってたし、面白そうだから言われるがままについていき、人気のない店に入った。
まーコミュニケーションを楽しむための代金だから、幾らかは何か買ってやろうと思っていて、実際その通りにしたのだけど、誤算が一つ。最初2人の女の子と喋ったので、彼女たちからそれぞれ少しずつ購入する予定が、見てる間にあとからあとから売り子が増え、もういい加減いらない、もう予算オーバー、と立ち去ろうとしたら、一人のが「私だけまだ買ってもらってない!」とそれまで可憐な少女だったのが、モンゴル相撲力士の血でも受け継いでんのかと思わせるほどの怪力を発揮して私の脱出を阻止。それまで他の子たちが売ってた値段の半額を叫び、じゃあ今までの値段はなんだったんだよ、とつっこむ間も与えず「あと1.5倍払ったらもう1個おまけするから!」と叫ばれた。要らないとはっきり言われてるのに、この期に及んでもう1個多く売ろうとするこの逞しさ。なんかちょっと感心しちゃったよ。
結局全員から物を買い、なぜか最後は「財布交換して」と言われ、学生の時使ってた古い財布と売り物の刺繍の財布を交換した。ブハラでアニエス・ベーの財布を持ってる女の子を見かけたら、商魂逞しいので注意してください。
まー出費と言っても1個1個は大した額じゃないし、昨日と今日とで滞在費総額が2000未満なのでいいんだけど、彼女らにああもお金かけるくらいなら、あの気のいい大学生たちに茶の一般でもおごるべきではなかろうか。そして買ってしまった物品、確実に持て余すな。刺繍製品、1枚は母親にあげるにしてもあと3枚どうしよう。そしてセラミック。重いよ。「ヨーロッパから2年も3年もかけて自転車でウズベキスタンに来る人も買ってってるけど問題ないよ。割れないよ」ああそう問題ないね、ってそんなわきゃない。いま感じているこの重さが幻だとでも?
買い物の前は「ウチでご飯食べない?」とか言ってたから「あ〜あ、お金使いすぎて貧乏だよ。晩御飯ヌキだね」と言ってみたらキャハハと笑うのみでディナーへの招待はなかった。悲。
そういうわけで一人晩御飯。昨日はプロフに胃がやられたので、ウズベクうどんに挑戦。やー、本当にうどんだったわ。これで肉が入ってなくて油を控えたら日本人にも馴染む味だね。もう夕食時は日が落ちており、街灯がないから本当に暗くていささか心細かったのだが、無事ホテルに帰着。ちなみに飛行機で一緒だった日本人家族とはここブハラでも再会したのだが、私がウズベク人の女の子と連れ立って歩いてたので驚いていた模様。そりゃそうだ。そんなことしたら大量に物を買わされちゃうもんね。そういやあいつら、私が帰るときに口をそろえて「他に何か欲しくなったらまた来てね〜」と言っていた。もういらんわ! でも明日道で会ったら挨拶ぐらいはしよう。面白かったからな。
やー、今日もいろんなことがあった。楽しかったな。