夏休みだけに

朝の通勤時間帯に家族連れの姿を見かける。今日みた親子は父母に小学校くらいのこども2名という構成。車両のはしっこに陣取り、なぜか父と息子は車両と車両の間のドアを開け放って連結部に立っていた。そこを隣の車両から一人の男性が通り抜けようとしたときのことである。父子は隣の車両に背をむけ、ほかの家族がいる側に体をむけていたので当然その通り抜けようとしている男性には気づいていない。よってこの男性、『ボク〜、そんなところに立ってたら危ないよ〜』と言いながら注意を自身のほうに喚起し通り抜けたのである。
この男性の言うことは正論である。超正論。『迷惑だからそんなところに立つな』と言ってもおかしくないくらいなのに、そんなことはおくびにも出さず相手の『ボク』の身を案じるこの優しさ。ずいぶんちゃんとした大人である。ただ残念なのはこの男性、見た目が『マイケル・ジャクソンのそっくりさんを名乗って大いに失敗した風』であり、髪はちりちりパーマのロン毛、ただし服装はサラリーマン、という普段通勤電車で滅多にみかけないタイプであり、注意を受けた子どもはあっけにとられて唖然呆然、己の行動の非を省みるどころか、その男性の発した言葉の意味すら把握しかねる様子であったのだ。あああ〜、せっかくあの男性が『通勤電車で余裕のない怖い大人』にならずにスマートに注意したというのに、受け手の方に余裕がなかった。いい人だったのに、理解されなかった。まことに残念である。
一緒にいた親は子どもと同様、ポカーンと呆けた顔して『なにいまの…』。しかもその後も連結部に立ち続けていた。揺れるからほんとに危ないし、さほど混んでなかったからそんなところに避難する必要もないので、できれば父が子をリードし父子ともども連結部から出てきたらよかったのではないだろうか。子どもと一緒になって呆けている場合ではない。
そんなところに避難、で思い出したが、ずいぶん前にうちのやつが仕事から帰る電車内で、やはり連結部に立っている人を見かけたそうだ。その時はかなり電車は空いていたのでやっぱりそこに立つ必然性はなく、しかも上記の親子と違って連結部の両サイドのドアを完全に締め切っていたそうだ。世の中いろんな人がいるなぁ。その人にとってはその密閉領域が心地よかったのだろうか。うちのやつはその人の存在に気づいたとき、とても吃驚したというが、そりゃそうだよな。私も見てみたかった。