デミアン

作家の新田次郎の息子で数学者の藤原正彦氏はアメリカで研究員をしていた時代に”ガールフレンドにデミアンと呼ばれていた”と自慢していた。それを聞いた私と友人は即”デミアンは違うダロ”とつっこみをいれたものであった。
そんな話はどうでもよいのだが、デミアンである。中央線で今日見掛けたある若者、年の頃は二十歳くらいであろうか、髪も肌も一様に茶色く、よっぽど普段茶色い部屋に住んでて保護色になっちゃったかと思わせる茶色さであった。なんかヨレヨレのTシャツ着ちゃってタオル首から下げちゃってアタマ弱そうな雰囲気を醸し出していたのだ。
これがデミアンを読んでいたのである。岩波文庫の赤で。しかし開いた状態の文庫を手にしたまま居眠りしていたのであるが。それにしてもこの意外性、彼に対して好感を持つのは私にとってやぶさかではない。よくよく見ると本文始まって1頁目で彼は既に寝ているのだ。頑張ったけど力尽きちゃったか、とほほえましく彼を見つめる私であった。