カエル出産

今年の6月のことだが、イランの女性がカエルを出産したらしい。原因は不明で、汚れた水の中で泳いだ際に体内にオタマジャクシが入ってしまい、そこでカエルに変態したのではないかと推測されているそうだ。オタマジャクシ、入ってきたとしても気づかないもんかね。気持ちの悪い話だが人事なので結構面白い。
子どもの頃に大変美しい挿絵の絵本を持っていた。その絵本の中にある姉妹の話が載っていた。性格の陰険な姉娘は母親のお気に入りで、心の清い妹娘は母親に疎まれている。ある日この母が妹娘に家からえらく遠い池に行って水を汲んでくるように命ずる。当然ながら妹娘は素直に従い、池まで行くとそこに老婆がいて水を汲んでくれという。言われたとおりに下だけで何故か妹娘は口を開けばその口から花々や宝石が飛び出すようになるのだ。それを見た母親は姉娘にも同じように水を汲みにいかせるのだが、この姉娘がこんな苦役を喜んでこなすわけがない。不平をもらしながら汲みにいき、果たして池にたどり着くとお約束どおりそこにはあの老婆がいる。そこでこの姉娘、予想通りというべきか、老婆に悪態つくのである。するとどうだろう、姉娘が口を開くとヘビ、カエル、毒虫が飛び出るようになってしまうのだ。
子どもの頃の記憶なのでディティールは忘れているのだが、大筋はこのような話であった。幼心に私は姉娘がここまでの仕打ちをうけるほどに酷い娘であっただろうかと悩んだものである。それに宝石にしたってカエルにしたって、どうすれば口から飛び出るというのだ。当時幼稚園児だった私は勿論「質量保存の法則」などということは知らなかったのだが、それにしても論理的に成り立たないのでは、と漠然と感じていたものであった。
しかし、このカエル出産のエピソードである。爬虫類の卵が体内に入って出産、というのは大昔から時に起こる事象だったのではなかろうか。何百年も前の人間がその様を見たら呪いだのなんだのと理由付けして合理化するのも当然だろう。こういった出来事が先で、ひょっとして件の物語などが形成されていったのではなかろうか。