東南アジア四次元日記

宮田珠己著 \638 文春文庫PLUS ISBN:4167660210
恐ろしいことに電車の中で笑ってしまうことに躊躇いを感じなくなってしまった。昔は笑いそうになると懸命に堪えたものだけれど、もはや堪えようという気持ちすらない。あたかも私の周囲には人っ子一人存在しないかのように自然な笑い方をしてしまう。こんなことで良いのであろうか。まあいっか。
タマキングの本はこれで3冊目だが、彼の文体には既に慣れきっているため、冒頭から存分に楽しむことができた。今回の旅は97年のもので、東南アジアを縦横無尽に回ったものである。いや〜、東南アジアにこんな変なもんがあるなんて全く知らなかった。ことにベトナムの「盆景」を知らなかったことは私にとって大きな痛手である。何故なら1ヶ月ちょっと前にベトナムに行ってきたばかりだからだ。クチの地下トンネルだけで私としては大いに満足していたのだが、その程度で満ち足りているなんてまだまだ全然浅い。楽しみはもうその何倍もベトナムに残っていたのだから。
しかしこの本で私が一番に注目した国はベトナムではなく、ミャンマーである。クーデターとかスー・チーさんとか、不穏な雰囲気の国だという程度の非常にいい加減な認識しかなかったが、あんなわけの分からないもので溢れてる国だとは思いもしなかった。精霊のことをかの国では「ナッ」というそうだが、その響きからして私の心をぐっとつかむものがある。岡の上の巨大涅槃仏も是非名まで見てみたい。
こんなわけの分からないものばかりを目指して旅行しているのだから、タマキングに是非ボマルツォの存在を教えるべきだ、それはもはや私の義務だ、位に思って使命感に燃えていたのだが、途中でしっかりボマルツォの名が登場した。やっぱ知ってたか…。しかし彼は実際に行ってるかどうか分からんぞ。自慢ではないが私は行った。ボマルツォの手前のヴィテルボでしっかり道に迷ったりもした。あれは最高だったなぁ。あの意味のなさ(いや、作ったオルシーニ候には十分に意味あったんだろうけれど)が素晴らしい。タマキングの本に登場した建造物と違って派手さは無いが、作られた年代が既に他の追随を許さないレベル。だって1500年代だぜ。っていつの間にかボマルツォの話になっているが、要するにタマキングに憧れるという話である。いいなぁ、あんな旅を私もしてみたい。