ローマ人の物語11 ユリウス・カエサルルビコン以後(上)

塩野七生著 新潮文庫 \500 ISBN:4101181616
この中の登場人物ではトレボニウスという将の名が気になる。トレボと初めの3文字を見るだけで tre beau に見えてしまい、まるで彼がナルシシズムの権化、自意識過剰のバカ男に思えてならないのだ。実際は全然そんなことはなく、私の中での問題なのだが。この tre beau が邪魔をして、それまでどんなにこの世界にのめりこんでいてもトレボニウスという名を見た瞬間にはもう引いてしまっているのだ。なのであんまり登場して欲しくない人物でもある。
それからキケロが好きだ。逆境に置かれたときのあの弱さが堪らない。普段どんなに立派なことを言っていたとしても、あの泣き言連発手紙書きまくりを知ってしまうとダメ人間に見えてしまう。そこが好きだ。なんとも人間らしいではないか。どんな状況に置かれても、誰に対しても恥ずかしくない態度をとるなんてよっぽどの人間でなければ不可能であろう。人が泣き言を言う姿を目にすると安心するのは、私自身が逆境に弱く打たれ弱いからであろう。ああ、この人もなんだ、よかった、と。キケロが情けない手紙を書いたというシーンになると毎回、もっとやれ!もっと情けなくなれ!!と念じてしまう。今後も彼の弱さに期待したい。
ところでカエサル。彼がどんな人物か全く知らないうちから私は元来英雄というものが苦手だったので、このローマ人の物語に登場し始めたときからあら捜しをしてやろうと色眼鏡で見ていた。誰もが偉人だと評価する人物、という時点で捻くれものの私はじゃあ小カトーに肩入れしてやる、と思ってしまうのだ。でもルビコン以前を読んだ時点でカトーに肩入れは不可能だと悟ったけど。ルビコン以後になってようやく色眼鏡をはずすことができてきた気がする。そうすると、やはり魅力的なんだよね、カエサル塩野七生にまんまと乗せられてるのかもしれないけれど、それはそれで心地よい。早く(中)を読もうっと。