日本産万年筆型録

\1980 六耀社 ISBN:4897375053
日本産の万年筆のムックである。H.WORKS長谷川さんカッコイイ!!なんでこんなにカッコいいんだ!こんな人が存在したなんて。私の万年筆界に対する知識は思っていた以上に少なかったのだ。長谷川さんは完全手作り万年筆の職人さんで、ここまで完全に手作りされるのは世界でも他にないそうだ。子どもの頃から万年筆に親しんできたそうだが、完全に満足のいくものに出会えなかったから自分で作ってしまったのだそうだ。しかも大学では金属工学を専攻されていたとかで、私の目には万年筆作りに対する姿勢が研究者のそれのように映る。こんな職人さんがいるなんて、なんて凄いんだろう、もう瞠目。ここまで読んだだけでも十分すごいのだが、もっと吃驚したのはこの方、万年筆作りと平行して非常勤講師として大学で材料学を教えているというのだ。いいなぁ、こういう人。
これまで外国のペンばっかり使ってたけど、私がいかに国産を軽んじてきたか身にしみて分かった。前に池袋のロフトに仙台・大橋堂が来ていたときに試し書きをさせてもらったのだが、私が文字を書くや否や「ペンの持ち方が悪い」と叱られた事がある。私は冷やかしなどではなく本当に万年筆が好きなのだ、ということをアピールするために問われてもいないのにその日携帯していたアウロラとスーベレーンを見せてしまっていたのが裏目に出てしまい、「舶来のペンばかり使ってるからそんな持ち方になるのだ」と言われてしまった。慌てて持ち直すと「一朝一夕には直らない」とも。今時客にこんな手厳しい意見を言う人間はそうそういないので私としてはある種の爽快感すら感じたのだが、そこでいわれた内容というのは至極尤もでもあったのだ。
曰く、舶来のペンと言うのは横書きに適しており、縦書きをする日本語には不向きなのだそうだ。実際には私は滅多に縦書きしないので全く問題ないのであるが、日本語の書き方に対して意識が低かったと半ば反省したものである。アルファベットのようなシンプルな文字を書くのと違って漢字は画数も多く、この点でも漢字を書くには国産品のほうが良いと聞いたこともある。にも拘らずデザイン性で私は今までイタリア物にばかり目が行っていて、国産品でちょっと興味を持っていたのは中屋万年筆のセルロイド金魚だけだった。これもペン先に、というよりデザイン性によるものである。
しかしもう今日で完全に意識変わった。日本産万年筆、いい。なにより職人技がいい。それもこれもこのムックのお蔭である。「趣味の文具箱」は眺めていてとても楽しいムックであったが、この本は今まで私が見ようともしていなかった世界の持つ魅力を私に示してくれた。深いなぁ、万年筆の世界。もっと勉強します。