ジョゼフ・フーシェ―― ある政治的人間の肖像 ――

シュテファン・ツワイク著 \798 岩波文庫 ISBN:4003243749
私のシリには今、アザがあるのだがこれは断じて蒙古斑などではない。そこまで若くはないのだ。すべって転んでシリから着地したに過ぎぬ。私は臀部の肉の存在理由を再認識した。ありがとう、シリの肉。しかし痛い。落ち着かない。どうしたものか。
そんな状態で読んだのがこれ。佐藤亜紀が以前、倉田江美のコミック「静粛に!天才只今勉強中」を絶賛しており、それを知って一もニもなく買いに走って読みふけったのだが、これの主人公であるジョゼフ・コティのモデルになった人がこのフーシェ。大まかな筋はコミックの通りであったがコミックにはない面白さがあった。この面白さはツワイクのなせる業か、それとも訳文の巧さか。きっとその両方であろう。フーシェってのは陰謀の限りを尽くしてその二枚舌っぷりには周りもあっけにとられるばっかりなのだが、それを評して「生まれついての裏切者」。凄い表現。フーシェにしてやられたロベスピエールの心情を表す際の表現が「フーシェ野郎」。フーシェ野郎って…、一体どんな野郎だか全然想像付かなくて面白い。
私の解説なんてどうせ巧くないのだからこの程度にしておくが、兎に角面白い。こんな政治家、日本にはいないだろうねぇ。いない方がいいかもしれないけれど。これを読んでてフーシェの次に私が興味をおぼえたのはタレーラン。あれもすごそうだ。陰謀を張り巡らす様を傍で見ている分には最高に楽しいのだが、こういう人物連と直接関わるのは御免蒙りたい。去年知った歴史上の人物の中ではピープス氏がダントツに面白かったが、今年はこのフーシェに夢中になりそうだ。