実録・外道の条件

町田康著 \460 角川文庫 ISBN:4043777019
これは短編集なのだが、作品が時系列で並べてある。するとどうだろうね、だんだん面白さが増しているのが分かるのだ。一番最初の作品などは1995年に書れたものなのだが、現在の面白さの片鱗は見せているものの思い切りの足りない感じがする。深く読み込んでいるわけではないので異論反論あるだろうが、私としてはこの人の面白さは、訳の分からぬエネルギーで読み手をぐいぐい引き込んでいくところにあると思っている。なんだこれ、意味わかんねぇ、って。あとはこの人の言語センスか。要するにこの人の文章が好きって事なんだけどね。それが95年くらいだとちょっと物足りない。心なしか説明口調の文体の部分もあったりして。
この説明口調って言うのは曲者だと思う。本人がそれを自覚してやっている場合にはそんなにイヤじゃないのだが、自分のイメージする世界を描ききれないときにやってしまう説明口調は私の好みではない。その好みじゃない所以を具体例を出して説明しようと思ったのだが面倒なので割愛。興味のある人は各自考えてください。
とにかく時代が進むにつれて面白さも増し、最後の一作が一番面白かった。井の頭線に乗っている間にこれを読んでいたのだが、気がつくと私の顔は緩みきり、いやらしい笑顔を湛えていたようだ。というのも隣に座っていた二十歳前後の女の子が怪訝な顔をしてチラチラ私の様子を伺っていたからだ。気味悪いか?いいもん、別に。私はそんな事構わんもんね。とまれ、町田康は好きですよ、私。