観光に向かない体質

昨日だらだらと過ごしてしまったために今日は更にそのだらだらに拍車がかかってしまった。今日、どこも観光しなかった。何をしてたかってカフェで読書だ。わざわざ外国まで来て読書したらダメですか?ダメって言われてもやるけど。しかし不思議なことに朝10時に宿を出たのに帰ってきたのは18時だった。一体どこで何をしていたのだろう?自分でも理解できない。無為に過ごすと時間があっという間に過ぎるというのは本当だね。では今日何をしていたかおさらいしてみる。つまらんから読まんで良いですよ。
まずチケットを買いに行った。昨日のコンサートで残念な事態になったので学習し、ちゃんとしたチケットオフィスに行った。買ったのはヤナーチェクのオペラとマリオネット劇場の「ドン・ジョヴァンニ」。ヤナーチェクの方はタイトルがよく分からなかったが多分利口な女狐がなんたらいうオペラだと思う。で、次は天文時計の前のカフェ。
「歩き方」に載っていたのだが、天文時計の前の建物の1階(日本で言う2階)のカフェが絶好のポイントで、窓の正面が天文時計そのものになっているという。「歩き方」には「カフェ・ミレナ」となっていたがどうも廃業したらしい。「グランド・カフェ・プラハ」になっていた。今まで飲み物と言えばカプチーノ或いはカフェラッテばかりで、頼むごとに「なんでイタリアでもないのにこんなものを…」と納得がいかない思いであったので今回はウィンナカフェ。美味しかったです。やはりカプチーノの類はイタリアで飲む方が美味しいので、ここはウィーン風の方がよろしいのであろう。だってウィーンの方が近いじゃん。天文時計を眺めつつ澁澤龍彦の「サド侯爵あるいは城と牢獄」を読む。
1時間くらい読書をしてツーリストインフォメーションに行き、その後がすでに記憶があやふやだ。多分徘徊老人になっていたのだと思う。寒いし自分がどこにいるのか分からなくなるし腹具合も悪くなるしで通りがけのカフェに入る。カフェルンゴを頼み、ついでに店のお姉さんに「どこにいるのかわかりません」と言うと丁寧に場所を教えてくれた。ありがとうお姉さん。大体場所も分かったことだし再出発だ、と意気込んだがまた道が分からなくなった。今でもあの時通った道がどうなってるのか、地図を見直してもよく分からない。私が間違う筈がないので多分地図が間違っているんだと思う。
うろうろ彷徨っていたら旧市街の広場に出た。そうしたらば広場の一角で金属の円筒に何らかの生地を巻きつけて焼き、砂糖をまぶした謎の回転菓子を売っていた。甘くて美味しそうな匂いがするので、並んでまでして買ったのに思ったよりも美味しくなかった。名前が"Trdlo"となっており50コルナ。すごい名前だ。意味は分かんないけど母音が1個しかない。そのまま何故か購買意欲がわいてきてボヘミアングラスを購入することに。しかし残念ながら私が気に入ったものは単品売りはせず、6個セットだそうだ。そんなに沢山持って買えるのは面倒なのでとりあえず断念。
ヴルタヴァ川沿いを歩いて国民劇場方面へ。ヴルタヴァ、いいなぁ。大好きだ。本当に好きだ。この景色が好きだ。プラハの中で一番好きだ。川沿いのガラス屋さんでイタリア人の一家に遭遇。「いやいやイタリア人ですか!私イタリア語話すんですよ。英語だとなかなか思うところが伝えられず歯がゆくてねぇ。イタリア語話したくて堪らなかったんですよ」と声をかけようかと思ったが胡散臭い東洋人だと思われて終わりになるに違いないのでやめた。で、向かったのは国民劇場の向かいにあるカフェ・スラヴィア。
ここでは紅茶とパンケーキを注文し、やはり先ほどの澁澤龍彦「サド侯爵あるいは城と牢獄」の続きを読む。このパンケーキが恐ろしいボリュームで、食べきれないかと思ったがなんとか食べきった。1時間かかったけど。甘いものを嚥下するのにかかる時間で自身の老いを感じた。それで今日はおしまい。
一日を振り返ってみたが、8時間もかけて何もしてないことが再確認できた。しかし何でかな、シナゴーグハシゴしていたときよりも充実感があって楽しかったんですよ。なんか頑張って観光してると、なんでそんなに頑張ってるのか自分でもよく分からなくなって虚しさに襲われるんですよ。そんなに頑張るほど私はそこが見たかったのかな、と。ほら、私は「興味なければ行かぬ会」の会長なので本当にやりたいことしか出来ないんですよ。ヤンの家とか、最初から行きたいと思っていたところは楽しいけれど、シナゴーグとか当初の目的じゃないのに「せっかくプラハ来たんだからついでに行っておくか」的なモチベーションだとあんまり楽しくない。要するに観光に向かない体質なんですな。それが身にしみた一日でした。