寒さに適応する

キュビズム・ビル

いつもどおり朝宿を出て、では今日はヴィシェフラットに行ってみよう、と気分良く出発したのだが、何かがおかしい。何かがいつもと違う。…わかった。今日はなんか暖かいのだ。普段は気に入った風景が目前に広がっていても、これをカメラに収めるためにコートのポケットから手を出すくらいなら死んだほうがまし、と写真撮影を断念するくらいなのに、今日は素手を出して歩いても平気の平左、一体どうしてしまったのでしょう。しかしこれでも気温は4度くらいだったらしい。4度が快適気温になってしまった私の身体。人間の適応能力は計り知れないものですね。
ヴィシェフラットというのはチェコの半ば伝説になっている王妃リブシェが住んでいたとされるお城なのだそうだが、私はここで何をしたかったかというと墓参りだ。有名人の墓があると聞くと行ってみたくて堪らなくなる性分なのである。しかし有名人と言ってもドヴォジャーク、スメタナミュシャの3人なんだけど。しかも大して思い入れはない。
たどり着いた墓地だが当然ながら案内図などは存在しない。そこそこ広い墓地の中から自力で上記3名の墓石を見つけなくてはならないのだ。暖かいといっても薄ら寒い墓地の中、自分のなそうとしていることにかかる労力を思って一瞬気が遠くなりかけたが、なんとか自分をごまかして作業に入った。そうしたら案外簡単にドヴォジャークが見つかったではないか。なんと幸先良いことだろう、この調子で次はスメタナだ!と意気込んだが次に見つかったのもドヴォジャーク。更に次もドヴォジャーク。…わりとチェコでは普通の苗字だったんですね。「山田」くらいの位置づけなんでしょうか。一番最初に私が見つけて喜んで写真撮影をしたあの墓は本当に作曲家のドヴォジャークのものであったが大いに疑問が残るが、もうあまり考えたくないので墓探しはこれにて終了した。中途半端。
人がいないのをいいことにヴィシェフラットを鼻歌歌いながらウロウロし、次はキュビズム建築だ。キュビズムが建築に結びついたのはチェコだけらしいのだが、実際見てみるととても面白い。いいでしょ?羨ましいでしょ?写真で見てもいいけどやっぱり実物見たほうが全然楽しいですよ。しかも私が一番見てみたかった建物は1階部分がレストランになってたから、私なんか中で食事しちゃったもんね。しかもニンニク大量投入されたスープにメインの料理、ちょっとしたお菓子を食べてワインも飲んで81コルナ。滅茶苦茶安い。羨ましいでしょ?悔しかったらプラハまでいらっしゃい!