アブサンに反応

友達が私の新居に遊びに来た。「君のチェコ日記読んだが昼間から飲んだくれている印象が強い」と言われた。そんな事言われているのに私は何も考えずにチェコで買ってきた酒類5種を自慢げに披露してしまった。しかも揃いも揃って皆度数が高い。一番低いのでも30度だった。そしてそのうちの一本を友人がおもむろに持ち上げ「これ、まさかアブサンでは?」と。勿論その通りである。彼女も本や映画などでは目にしたことがあったが実物を見るのは初めてだとの事。驚きつつ言った彼女の言葉はというと「これってそんなにいいイメージないよね」。
確かに転落人生の象徴のような感がある。しかもそれを指摘されるまで全く気づかなかった。よく見ると度数が72!バカか。それを迷うことなく買ってきた上に満足げに友人に披露した私って…。こうなったら彼女も私と同じ側に引き込んでやれ、と何度か飲んでみないか勧めてみたが断られた。
そんな彼女であるが新婚さんである。職場の若い女の子によく話題づくりとして「新婚生活どうですか?」と尋ねられるが相手の期待に沿うようなことは何一つないのだそうだ。しかし先だって、彼女のある念願が叶ったという。どうしても一度やってみたかったというその行為とは。彼女がたまたま旦那さまよりも遅く帰宅した晩のことである。玄関のドアを開けるなりこう一言。
「今帰ったぞ〜ィ、フロ、メシ、ネル」
これがどうしても言ってみたかったのだそうだ。確かにこれは職場の若い子を満足させる返答ではないわな。恐ろしいことに私は彼女のやってみたいことが何なのか大方想像がついていた。付き合い長いと分かっちゃうんですよ。彼女とは高校から院まで同じ学校に通い、ついでにサークルも一緒。二十歳前後の頃は「常に体言止で会話」や「6時間連続しりとり」などもやった仲である。ちなみに私だったらそのせりふに加えて「酔っぱらいのお土産」を手に持っていたいものである。よく大昔の漫画なんかで酔っぱらいが常に帰宅時に手にしていたあれである。
夕方彼女が帰宅するときに私も実家へと向かったのだが、すると彼女が「キミ、今日はいいチャンスじゃないか。是非このせりふを今日やってみたまえ」と勧められた。残念ながら私にはそのチャンスは得られなかったが。だって家に帰ったら猫がひとり発情しているのみで誰もいなかったんだもん。