近所の猫と絶交す

私はもはやおじいちゃんなのであろうか。朝6時になると目が覚める。自分の老人っぷりから目をそらすために無理やり7時過ぎまでベッドに居座り寝たふりを続けてしまった。しかしなんだろうね、起きようと思った頃には眠くなるのだ。世の中上手くいかないものである。
今日は友人が午後から遊びに来るのだが、暇なので近所を散策することにした。もともと全く知らない街ではないので「昔あったあの店どうなってるかしら?」などとちょっと浮かれ気味である。だけど実際はそうそう街並みが変わるはずもなく面白いこともなく、しかも日曜定休の店だらけで何も出来ずに徒労に終わり、その上帰りにちょっと道に迷った。家に帰った頃には迷子になった哀しさから心が少し疲れていたが、気を取り直してスーパーに行き食料調達しようと試みた。そしてこのスーパーがかなり古めかしい。数回既に使ったことはあるが休日の午前中に来たのはこれが初めてで、入店前から妙に活気付いているのが見て取れたのだが、入ってみたら私の予想なんかはるかに超えていて、軍艦マーチがかかっていた。しかも入って直ぐにすれ違った男性店員が結構大きな声で軍艦マーチを鼻歌で歌っていたのだ。なんだこの店…。かなり謎である。客は50代以上が主流だし、訳の分からないパワーにこちらも後押しされてしまった。迷子なんかで黄昏てる場合ではない。
スーパーからの帰り道、可愛い猫がいたので写真撮影を試みた。飼い猫らしく首輪をつけて玄関先に紐でつながれていたのだが、なかなかに人懐っこい。私の顔を見るなりにゃんと鳴いた。しかしこれが食わせ物で、私がカメラを向けるとこちらを向いているのにシャッターを切った瞬間にそっぽを向くのだ。てっきり偶然かと思い、数回試してみたが4回が4回ともあっちむいてホイ状態。もうイイ!アンタなんか友達じゃナイ!と絶交し、泣きながら帰宅した。
そしてこれから友人が来るというタイミングにだな、過日購入した冷蔵庫とオーブンレンジが唐突に届いた。狭苦しい部屋に馬鹿でかい段ボール箱が置かれて運送屋さんはそ知らぬ顔、明るく「じゃ!」とか言って去っていってしまい、残された私はダンボールを目前に途方にくれてしまったのであった。これ、どうやって設置すんだよ。まず第一に箱から出せないじゃん。しかしそこで死んでる場合ではない。私には友人を迎えにいくという使命があるのである。駅に向かうと10分ほど待たされた友人の姿が。
雑然とした雰囲気の中、とりあえず紅茶だけは良質の茶葉を使用してもてなし、ケーキは近所で買ってきた。先日私は「面の割れやすさ」というタイトルの文章を書いたのだが、かつて会社員をしていた時代に知り合ったこの友人も同期入社の中で一番最初に私の顔を覚えたという。50人くらいはいた筈なのだが…。なんでなんですかね。そんな友人をよそに私はおもむろにダンボールに着手し、さりげなさを装いつつ冷蔵庫取り出し作業に突入、友人が自ら手助けを申し出るシチュエーションを作り出すことに成功。お蔭でなんとか設置できました。ありがとうございます。
夜は本屋のバイトの仲間が飲み会を開いてくれたので飲みまくる。ビールを、何リットルんだでしょうねぇ。2リットル以上は飲んだと思いますねぇ。そこの店ワインなくてさ、若い娘さんが喜ぶような甘い酒はもはや飲めない体になってしまってるんですよ、ワタクシ。そんなん酒じゃねぇ、なんて言ってね。じゃあビールしかないじゃん?違う?だから飲みました。昔は中ジョッキ1杯飲むのが苦痛だったというのにねぇ。本屋では朝から午後1時までという早い時間帯でしか働いていなかったので、それなりに普通じゃない雰囲気を出しつつも皆わたしがこんな立派なガード下の似合う人間だとは思っていなかったようである。こういう時の私は女の人には受けがよく「カッコイイ」を連発されて有頂天。ますますおやじっぷりに磨きがかかりましたとさ。しかし今にして思うと皆本当は引いていて「カッコイイ」としか言いようがなかったのでは。