終電で吃驚

今日はじめてお給料が振り込まれた。本来ならもっと早くに振り込まれるのであるが、私は中途半端なタイミングで働き始めたので今月のみ日割り計算、月末振込みだったのである。そうしたらその途端に(いやたまたまなんだけどさ)忙しくなった。もうダメ。今日こそついに家に帰れない。給料入った途端に家に帰れない人になるのか…?
そんな軽い疑問が頭の中を過ぎったりもしたが、だからといってさして辛くない。難点が一つあるとするならお風呂の問題だけだ。急に家に帰れない人になったからといって、期を同じくして銭湯に行ってロッカー前にタオル干す人にまではなりたくない。それにお風呂セットももってないし*1。そんな私を見かねてか、デスクっていうんですかねぇ、相変わらず彼の立場が分からないまま一緒に仕事しているのだが、その方から帰ることへの許可が下りた。いやいやまだ働けます!徹夜には慣れてるんです!!…年取ってきたから最近微妙だけど。突っ込まれても居ない話題に自ら触れてしまった。
それでも帰っても良いというのでお言葉に甘えて帰宅。しかしそうはいっても終電ギリギリである。駅について改札くぐったら目の前にドアが閉まりかけた終電が!運動能力を微塵も感じさせない私の足がこのときばかりは俊足を発揮。アスリートも真っ青だ。
そうしたらさ〜、もう勘弁して欲しいですよ。私が電車に乗ったか乗らないかのタイミングで中にいた40前後のおばちゃん、あえておばちゃんと呼ばせてもらいます、そのおばちゃんが携帯片手によそ見しながら降りようとしてきたのだ。こちらは乗ろうとしているのに対して相手は降りようとしている。すれ違えるわけがない。もう凄い摩擦。周囲の協力もあってお互い目的を達したのではあるが、降りられた瞬間にそのおばちゃん、こうのたまった。
「もうなにすんのよ〜、ばかぁ〜」
何を言うんだよ。ばかはどっちだよ。ばかと呼ばれたことよりもばかといわれたまま電車で一人、沈黙しなくちゃいけない私の立場はどうなるんだよ。なんで身近に知ってる人が一人もいないんだよ。そんな事を思っていたら目の前にいた同世代の男性がすごく可笑しそうに笑ってる。しめた!彼を利用してやれ。
「ばかはあんまりですよねぇ、向こうの方がばかですよねぇ」
そういってとりあえず気持ちの建て直しをはかった。相手は笑ったままノーコメントだったけど。
でも1駅過ぎたくらいにその男性が声をかけてきて、さっきの人凄かったですよね、と。結局私が降りるギリギリまでそのおばちゃんの話をした。降りる間際に、声かけてもらってよかったですよ、あのまま黙って電車乗ってるのつらかったですよ、と言ったらさ、
「あのまま家に帰ったら、一人になってから腹が立ったり哀しくなったりするんじゃないかと思ったんですよ」
なんてできた人でしょう!本当にいい人だ。そういう彼は今日仕事を辞めたそうで。人生の岐路に立つ人と偶然にも話をしてしまい、その偶然性に希少価値を見出して私はすこし満足した。得した気がして。しかし終電には吃驚だ。「終電で吃驚」というタイトルにしたけど「終電に吃驚」だ。凡人には予想も出来ないことが起こるもんだなぁ。色んな種類の人を乗せて運んで終電も大変だね。お疲れ様です、終電。明日も頑張ってね。私は明日は乗りたくないけどさ。

*1:お風呂セットを常備する人にもなりたくない。