にくしみとショートケーキ、ジンギスカン

都電荒川線に乗りたいが為に都電の駅まで出向き、終着地は三ノ輪ではなく早稲田。学生時代殆ど何の縁も無かった早稲田である*1。降りたはよいけどすることなし。ということでリーガ・ロイヤルで韓国人シェフの作るケーキを食べた。「パティシエ・ジョンのおすすめ」とか何とか書いてあって、韓国人なのに何故にジョン?そう言えば昔中国に行った折に現地の高校生と交流したら彼ら、思いっきりアジア人の顔してリチャードとかジャッキーとか名乗ってたからそれと同じか?と思ってたら苗字がジョンだった。鄭鴻淵と書いてジョン・ホンヨンと読むらしい。
食べたのは私がパティシエの力量を計る指標としているショートケーキとチーズケーキ。チーズケーキはかつてシェ・シーマ時代の島さんがお店を超有名店にしたクレーム・アンジュと同じタイプ。ただ中に入っているのがルバーブ・ジャムであったので私には非常に好印象。食べてみると、アンジュタイプの方は割に旨かったね。ショートケーキも及第点ではあるのだが、わざわざこのケーキの為だけに再び早稲田まで行くかというと、答えは否だ。近所に住んでたりしたら気軽に食べるには十分美味しいけどね。重ねて言うが、アンジュは割と旨かったよ。
リーガ・ロイヤルは昔泊まったことがあって、こぢんまりとして可愛らしい内装が良かった。あんまり高くなかったし。たまに泊まりに行っても良いな、と思いつつそれっきりだけどさ。そこそこ高級ホテルのはずなのに私がケーキを食べたラウンジはラフな格好のご近所さんで溢れていた。それもその筈でかなり手頃な料金でビュッフェやってたんだよ。立地があまり良くないから地元民を取り込んでの経営なのかな。地元密着型のその雰囲気は悪くないね。私は好きだ。腹ごなしに早稲田大学近辺を散歩したが、こういう大学の雰囲気が「キャンパス・ライフ」っていうのかな、と思った。そして本日の最終目的地、中野へ。
中野に行って何するってブロードウェイだ。タコシェだ。新宿から快速で一駅とは思えないこの異様さ。中野って何なのかね。このブロードウェイにおけるまんだらけの占有率。4階の一角に秋葉原を彷彿とさせるスペースもあった。何が秋葉原かって、男臭さとコスプレ店員と、人体から発せられる異様なまでの熱気。キツかったっす。そしてタコシェで買ったもの。
UA!ライブラリー14 にくしみ
好美のぼる著 \600 東京文化研究所発行
貸本時代の漫画の復刻版である。欄外にはソルボンヌk子によるツッコミ付き。表紙を見ただけでもグッとくるものがあったのだが、電車の中で読んで吃驚。想像を絶するストーリー展開であった。化け物めいた容貌で生まれついた富豪の令嬢が、自分の身代わりの少女に学校に行かせて美しい少女達にイヤガラセをさせるというのが大筋で、これだけだと楳図かずおの「赤んぼう少女」を思い起こす向きも多いと思うが全然違う。勿論「赤んぼう少女」もまごう事なき名作ではあるが、この「にくしみ」には全く別次元の面白みがあるのだ。読み手側の予想を裏切るというだけでは済まず、裏切り方も壮絶なのである。そしてあの発散気味のラスト!まさに名作だ。好美のぼるという漫画家は私は初めて知ったし、果たして現在現役かというとそれもあやしげではあるが、今後も目が離せない作家である。タコシェでは他に「マイノリティ」というミニコミ誌を買い、冒頭の製菓会社「ブルボン」研究等が面白そうに思えたが、私には満足のいくものではなかった。やはり自ら「マイノリティ」を標榜しちゃいかんよ。真のマイノリティは自分から名乗らなくとも自他共にそれを認めるものである。ファッション化した「マイノリティ」なんて全然ダメ。
そして前日から俄にジンギスカンに対して情熱を持ちはじめた私は、ジンギスカン料理屋を求めて中野の街を彷徨った。出会ったのが「ひつじの謎」という店で、入店すると注文を取らずとも問答無用で基本のジンギスカン・セットを出してくるのであった。北海道の人はこれに用いるたれをジンたれと呼ぶのだよなぁ、と思いながら食べたジンギスカンはとても美味しく、食べ終わる頃にはちょっと飽きていた。ジンギスカンに対する情熱、終了。端で見たら何がしたい人なのか分かりにくい私の行動であるが、久々に充実した休日を過ごすことができて大変満足しました。

*1:大久保工科大学と一部ではささやかれる理工学部には若干縁があった