ルチフマンドロ

五本指の靴下が好きだ。今月初めに辞めた会社では皆靴を脱ぎ専らスリッパで過ごしていたのだが、滞在時間が長くなるとスリッパ履いてるのも煩わしくなって靴下でウロウロするのが自然となる。そんな時私の五本指の靴下を見ると「…いい靴下履いてますね」などと言ってくる者もいたが、そんな事はどうだっていい。私は五本指の靴下が好きだ。しかしいつも「五本足の靴下」と言い間違ってしまう。五本足って誰だそれ。
イタリアの学校に通っていた頃、こんなお話を読まされたことがある。主人公は売れないミュージシャンで、道で出会ったおじいさんに親切にしたら実はそれが魔法使いで、お礼に何かいいことしてもらうのだが、ああ、よくある御伽噺ね、主人公の職業が売れないミュージシャンってところだけおかしな感じだけど、と思ってたら全然違った。お礼は魔法のギターで、清い心で弾けば売れっ子になれる、しかし邪心を抱いたらギターが矢になり心臓を突き刺すので死んでしまう、という代物。主人公はお蔭で一躍大スターになるのだが、ギターの秘密を知ったライバルに殺されてしまいギターも奪われてしまう。一年後、主人公の名を覚えているものは誰一人としておらず、ライバルは超人気スターに。ギターは欠陥品だった、というのがオチだった。学校で読ますもんじゃないよな、という感想はとてもドメスティックな感じで日本の常識でしか物事を測れていない感じだが、まあ致し方あるまい。
この魔法使いの名前がルチフマンドロ(Lucifumandro)というのだが、先生が「この名前分かりますか?」とか何とか言ってきて私は内心「知らねぇす」と答えていたのだが、知ってるかどうかという話ではなかった。クラスメイトのスウェーデン人がまず「ルチは光!」(イタリア語で光の意luceの複数形がluci)と発言し、私は漸く先生の発言の意図が分かったのだが、そこですかさずクラスメイトのゲイのブラジル人が「フマはタバコ吸う!」(タバコを吸うがfumareでその三人称単数形)と発言。なるほどねぇ、と感心しつつも「もうないダロ」と高をくくってたら私が甘かった。
「アンドロは男!」
えぇ!なんでそれが男かよ。イタリアで男って言ったらウォモ(UOMO)じゃないんすか??全然分からん。しかし分かってないのは私を含めた東洋人3人だけっぽい。聞けばいいんだけど、なんとなく、ねぇ。本題じゃないし。あとで辞書を見たら吃驚だよ。アレクサンドロスとかのアンドロスのイタリア語形がアンドロでその程度は勿論承知していたのだが、このアンドロス、本来「男」の意だったというのだ。ていうかつまりアレクサンドロスって「正男」とか「信男」なんかと一緒じゃん。そして昔の「男」って言ったらそのまま「人間」なわけで、ひょっとして…、と思って調べてみたらビンゴ。アンドロイドのアンドロだ。更に調べてみたらオイドというのが「もどき」とかそんな意味。「アンドロイド」=「人間もどき」。いやぁ、語学って楽しいネェ。本当に面白いネェ、ってこの話、前に書いたことあったか知らん?急に思い出したのだけど。新宿の地下道歩いてたら。
ところで先日買ったチェコ雑誌「ツックル」の創刊2号が面白かったので創刊号を取り寄せてみた。日本人が「美少女」という言葉からイメージするような美少女がチェコにいるのか、というような記事があったのだが、その記事の最後に「次号予告:新宿にあるキャバクラ『東欧』に潜入希望」とあったのが面白かった。そして創刊2号を確認したら全然違う内容だった。希望は叶えられなかったらしい。しかしこのキャバクラ、『東欧』というだけあって東欧のお姉さん方が沢山いるのかねぇ。気になる。情報求ム。
追記:意味が分かったところで「ルチフマンドロ」の名のヘンさが増すだけであることに今気付いた。