表参道にて結婚式

いやぁ、いい結婚式でした。お式全体の雰囲気に花嫁の人柄が出ていると言うかなんと言うか。私自身彼女の結婚を心からめでたいと思ったし、彼女がこれから幸せになるかと思うと目頭が熱くなる想いだったのだけれど、それは私だけのことではなかったのである。新婦の友人で、新郎の院生時代の後輩である女性もスピーチの終盤で涙ぐんでいた。あの涙の気持ちはよく分かるなぁ、私には。本当におめでとう。列席者にここまで祝福されるのは、やはり彼女の人徳だろうね。
本当なら私は「私だってお嫁にもらいたかったのに、ズルイ」と新郎をなじり、かつワインやら何やら飲んだくれて鼻を赤くさせながら(←トルストイ民話集などにでてくる働かないロシアおやじのイメージで)「幸せにしなかったら承知しないぞ」とからむ予定だったのだが、最近もういい加減私自身もいい大人であることを自覚しつつあったので自粛しておいた。
面白かった点は多々あったのだが、大きいところで言うと2点。まず1点目は新聞の号外が出たこと。新聞記者である新婦の同僚が彼女の結婚を報じる号外を刷って配ったのだ。面白いねぇ、こういうの。二人のエピソードを軽くからかうように報じたりしてた。ちゃんと体裁も、彼女が記者を務める新聞社のものと同じようになっていた。当然だよね、新聞作ってる本人が作ったんだから。実を言うと私はこの号外を中心になって作った彼女の同僚に対して粗相をした。受付嬢の役目を仰せつかっていたので受付開始よりも40分ほど早く会場に出向いたのだが、その時に「荷物お願いします」と手渡したのがその同僚の彼であった。いやだって、普通のお客さんがそんな時間に来てると思わなかったし。すみっこにピシッといい姿勢で立っていたし。本人も私が手渡しても特に何も言わなかったし。真相が明るみに出たのは受付を開始した直後である。その彼が私のところにやってきて「受付お願いできますか?」とか言ってくるので、何言ってるのかしらン?この人、と私は思い若干怪訝な顔をした可能性も否定できないのだが、その直後に状況を把握したという事である。あのときのアナタ、この日記を見てるとは思えませんが、失礼いたしました。ここにお詫び申し上げます。
私がその存在を脅威に感じていた新郎側のお客様で頭にインドのターバンを巻いてきた方だが、予想と違って以外にも会場に馴染んで然程の存在感をアピールすることはなかったように思える。もっともそれは私に対しても言えることではあるが。だって会場には私はそのターバン氏よりももっと凄い人がいたんだもん。それこそが面白かった2点目。
洞窟探検を趣味とする新郎であるが、披露宴のさなかパワーポイント使って洞窟の探検方法、洞窟に住む生き物*1の説明、洞窟写真の醍醐味などを熱く語ってくださった。しかも雰囲気を出すため日ごろ愛用しているヘッドライトつきヘルメットを被ってでの語りである。語り終わってからはヘルメットを小脇に挟んだりして。よっぽど洞窟探検が好きなのだろう、あんなに結婚式でイキイキしている新郎というのはそうそういないと思う。そして私は、こんなにも好きなことがあって、それをこんなに幸せそうに語れる人はとても素敵だと思いました。
それにしても、研究者が主役の結婚式ではプロジェクター登場率が高いように思う。というか私の知る限り100%の確率でプロジェクターが登場している。今日の新郎のパワーポイントがそうだし、私の院生時代の先輩の結婚式でも登場した。その時は新婦がパワーポイントを使ったわけではないけれど。新婦側の主賓はかつての私の指導教官でもあった人なのだが、スピーチでは新婦の経歴とか人柄について語るのが普通だと思うのだけれどこの時は違った。いきなりノートPC出してきて「彼女の研究は宇宙のフラクタル構造で…」と語りだしたのだ。あのときの会場のざわつき、どよめきは今でも忘れられない。
それからこの結婚式の素晴らしかった点。花嫁がとっても素敵だった。お色直しのドレスもとても品が良くて素晴らしかった。大抵お色直しのドレスと言うのは私の美意識にはそぐわないものが多いのだが、彼女のドレスだけは違ったね。凄く素敵。勿論ウエディングドレスも素敵だったけど。はぁ。本当に結婚してしまったのね、彼女。あ〜あ。私がお嫁にもらいたかったよ。ご両親も妹さんも、とても柔らかい雰囲気の素敵な方で、こういうご家族に囲まれてるから彼女もあんなに素敵な女性なんだろうな、と思いました。やはり私のように、父親が娘に「みみっちい」と言い、娘も父親に「ドケチ」というような関係*2ではあのような娘さんにはなれないのである。まあ、うちだって面白くていいけどさ。
それから料理がめちゃくちゃ美味しかった。私が今まで出席した結婚式の中で一番美味しかった。美味しいレストランでの結婚式大歓迎。料理が美味しいのは最高だね。フォアグラのフランは一口食べただけで目が覚め、全身の細胞が生き返るように思えたほどでした。
ところで、今回も私は別人になりましたよ。プロのメイクで。アンタ誰?というくらいに変わった気がする。それもそのはず。ファンデーション4色使いで、筆で塗りたくられましたよ、顔にお絵かきするみたいに。修復中のフレスコ画になった気分。ウソ。幾らなんでも私の顔、そこまでひどくありません。ひび割れてはないです。人間の顔してます。しかしメイク終了までにかかった時間は1時間15分ほど。丁寧に顔を作ってもらえてとてもよかったと思いました。ということで大満足に終えた一日でありました。

*1:メクラチビゴミムシという名前のムシがいるらしい。「メクラでチビでゴミですよ!」と新郎が力説していた。

*2:2005年9月18日の日記参照。