ダイアログ・イン・ザ・ダーク初体験

2年ほど前から参加したいと思っていたこのイベント、ついに今日参加することができた。同行のちるさんとは広尾駅で10:40に待ち合わせ。11:00からなのに、待ち合わせ時間早すぎたかなぁと思いつつチケット見たら「20分前には受付を済ませてください」とか書いてあんの。大慌てで会場のD-HAUSまで走った。ちゃんとチケットは見ておかないとダメですねぇ。昔はそういった類のことは入念のチェックを欠かさなかったものだが、年をとるにつれて生きる上でのスタンスが「まあ、なんとかなるだろ」に変わりこの体たらく。オバサン化?
開始前に暗闇の中で使う白い杖の使い方を教わりつつ、参加する他の人々と自己紹介することを求められて若干迷惑に思ったが、とりあえず義務は果たしいざ暗闇へ!と思った途端に腰が引けてきた。1時間も完全な暗闇の中にいるなんて、発狂するんじゃないか?ちょっと暗闇なめてたかも…。突然顔にこんにゃくがあたったりしたら腰抜けてうずくまるぞ、きっと。などなど不安な想いは脳裏を駆けめぐり、嫌でも動悸が高まるというもの。近頃の私のニワトリに対する傾倒ぶりは自身の腰抜け具合のメタファーだったのだろうか。アテンドの女性の声がかわいい感じで、たとえるなら「萌え」っぽいけど「萌え」ではない、作ってないかわいらしさで、安心感を与える雰囲気ではあったのだがそんなもん、その時の私には聞こえちゃいないのだった。
集団からはぐれるのを恐れた私は、予想通りの行動だったのだが、アテンドSさんにぶつからん勢いでくっつきまわり、つねに集団のトップをキープ。遅れをとっている後方の人々を配慮してSさんがそこを離れるともう不安。そんな感じ。本当の暗闇って、目が慣れても暗いんだねぇ。頭で分かっていても体感すると全然違うよ。
暗闇に入ってすぐに橋を渡り川を越えたのだが、Sさんが「河の水に触ってみて下さい」と言い、私の手を引き水の在処を教えようとしたときのことだった。「川」っていうぐらいだから足下に水があるのかと思ったら存外に、膝の位置より若干高いぐらいまで手を下げた時点で水に手が触れ、予想外のことに思わず「うひゃあ」と叫んでいたよ。本当に腰抜けのふぬけだな、私。この頃には自ら声を出し、後方の人々を導くのにも抵抗感がだいぶなくなっていた。このあと干し草の上に寝そべったり、トンネルを抜け駅のホームを通過したり、人々にも暗闇にも次第に慣れていった。
面白かったのはブランコで、木製の、ベンチ様の背もたれつき二人載りブランコに知らない男の人と一緒に乗ったのだが、体が揺れると世界がまわる感じがするのだ。あんなにクラクラするとは思わなんだ。要するに普段ブランコをこいでいるときは、まわりの景色の具合によって、自分の体が水平からどの程度ずれているか認識しているという訳で、景色も地面も見えない状態では世界の位置付けを把握できずにクラクラするという訳だ。面白いねぇ。
「疲れたでしょうから私の行きつけのバーで休みましょう」というSさんに導かれ、店に入って席に着き、私はワインを注文。人によっては視覚情報がないために舌や鼻が敏感になり、普段よりも味や匂いを強く感じたというものもいたのだが、私の舌は視覚情報になんて惑わされていないことが判明。普通に味わえました。普段から舌や鼻がとても敏感ってことね!
この時点で20分くらい経過したのかなぁ、と思ってたら全然違い、実は既に45分も経過していたのであった。目が見えない分他の感覚を研ぎ澄まし、神経を集中させていたから早く感じたのでは、という話で、Sさん曰く「お子さんだと結構正確に時間を当てるんですよ!」と。参加者の一人が「子どもは普段もいろんなことに集中してるから、暗闇でも感覚が変わらないのかも」と言ったら、Sさん「あるいは暗闇に慣れるのが大人に比べて早いんでしょうね」。これを聞いてワタクシは自身の保守具合に若干恥じ入りましたよ。きっと子どもなら干し草のスペースで遊び回ったろうに、私ときたらちるさんとはぐれない程度、人のぬくもりが感じられる範囲、つまり感覚的に「安全」と思われる範囲でしか行動していなかったのだ。いつのまに私はこんな大人になってしまったのでしょう。この後薄明かりの中で感想など言い合って終了。
ところで暗闇に入って割と直ぐに直径35cmくらいの木があったのだが、私が「木だ木だ」とか言っていたらアテンドSさんが「触ってみてどんな感じですか?」というので「表皮がごつごつして硬い」と答えたら「表皮…」と若干笑われた。何でだ。的確に答えてるじゃないか。どこが可笑しいのか述べよ。
そんな感じでイベントは終了し、ついでに会場内の他のスペースで開催されていたドイツ年関連のイベントも見、ドイツビールにソーセージなども堪能しつつ岐路についた。広尾から恵比寿まで歩き、途中トシ・ヨロイヅカを横目で見つつスルー。恵比寿駅で「寄り道するから」とちるさんと別れて向かった先はモリコーネ。あそこのパンツェロッティ美味しいんだよなぁ、と想像しつつ着いたら店なくなってた。ショック。閉店したのかよ、いつのまに。そんなこんなで失意のまま会社で仕事しています。