いじけながらも楽しく過ごす。

タロフォフォ滝リゾート公園

二日目。グアム観光の真骨頂は南部にある。グアムのガイド作ってた私が言うのだから間違いない。作ってた当時はグアム未踏であったことを鑑みると土台が揺らぐのだが。南部に行くにはレンタカー借りるかオプショナルツアーに参加するしかないのだが、なにぶん私はブレーキとアクセルを間違う女である。幾らグアムが日本の運転免許証さえあれば国際免許ナシに車を運転できる*1と言っても、ここはツアーバスによる観光を選ぶ方が、賢者の選択ではないかと思う。よって私は賢者ではないのでレンタカーを借りた。ウソです。そんな根性ありません。命を危険に晒すよりは家族連れで溢れたツアーバスの中で「ホラ見て、あの子一人よ、どうしちゃったのかしら」と後ろ指さされるほうが幾分ましです。あのねぇ、何度も「一人一人」って書いちゃって「あれあれ、またこの人いじけちゃってるよ、自意識が過剰だよ」って思ってるでしょ!全然違います。本当に皆きいて来るんだよ。顔合わせた途端に「ヒトリ?」って。ジャパニーズはシャイだからロコツに聞けずに私の事ジロジロ見るだけだけどね!うるさいなぁ、見りゃ分かるでしょ!ちゅう話ですよ。
ともかく南部ツアー*2はいきなり「旧日本軍砲台」から始まる。朝からディープな感じだ。砲台なので高台にあり、しかも簡単に敵に見つかってはいけないからだろうけれど木に囲まれている。獣道を通って目的地に向かう道中、やたらとでかいカエルが大量に出没。横井さんはきっとこのカエルを食べているに違いない。ツアーに参加していた唯一の非日本人グループ(私は勝手にアメリカ人夫婦だと思っていたが本当はオーストラリア人だったらしい)がカエルの背中をつついたら勢い良く放尿して吃驚した。砲台については、何も語るまい。自分で見てきてください。ここで本当に、同胞が戦っていたんだなと、実感したかぎりです。こういう感覚はさ、本当に目にしないと分からないものだから。深く考えずにグアムに旅行に来て、何の気なしに参加したツアーでこういう物が含まれていたら、その人はきっと驚くだろうけれど、それは上手くいえないが「いいことだな」と思いました。更に奥にはへんなところに転がった砲台があり、聞けば「台風で転がった」そうな。グアムの台風は凄いんだよ。大型ショッピングセンターが数年にわたって営業できなくなるくらいに壊滅的に破壊されたりするからな。もっと奥には真新しく緑色に塗りなおされた砲台が。なんでこういう事するのかねぇ。錆びたままでいいじゃん。
ナム滝という小さな滝を見、グアムの原住民であるチャモロ人のココナツの利用法をデモンストレーションしてもらい、その後イグアナの蒸し焼きを食べた。私は中国でカエル、ベトナムで犬とこれまでにも日本人が嫌がる生き物を食べてきたわけだが、まさかここでイグアナを食べられるとは思わなかった!ラッキー!と嬉々として食べていたら周りのオバサンたちにドン引きされていた。それもそのはずで、それから数時間後に生きてる状態のイグアナに私は出会うことになるのだが、生前のそれは闇のような黒地に細密で鮮やかな黄色の斑点がビッシリと描かれた体を持ち、流石の私もコイツを食べたのかと思ったら吐きたくなった。画像アップロードしようかと思い今その写真を確認したらそれだけでもキモチワルイし、読んでくださってる方々に対してもイヤガラセでしかないのでやめた。でも味は悪くないんだよ。犬は不味かったけどイグアナは悪くない。カエルの方が美味しいけど。鶏肉ににてました。
あとで不快になるとも知らずに大喜びでイグアナを食べた次は、思いがけぬ所に連れて行かれた。そこは横井さんの旧居で、終戦を知らなかった横井さんら5人の日本兵が住んでいた鍾乳洞だった。横井さんはそこで他の4人と上手く折り合わなかったらしく、出奔して一人で穴掘って住んでいたお蔭で発見が終戦から28年後であったのだが、残った4人の方がまだ運があった。4人のうちの2人は病死しちゃってたんだけど(ここで私は昨日「人類vs感染症」なんて本を読んでいたせいで「2人は感染症で死んだのだな」と勝手に断定)、残りの2人は終戦から15年で発見されたらしい。「横井さんもここにいれば15年で日本に帰れたのに」という声を漏らすツアー参加者がいたが、それは同行の全ての者の想いと同じであっただろう。横井さんの掘った穴に関してはほぼ「リゾート」化されているのだけれど、ここは全く手を加えられておらず、道路からそれてこの鍾乳洞へ上がるにしても、標識すらなかったのでこのツアーに参加しなければ見ることはできなかったかもしれない。
昼食の最中にゴキブリが出没し、私を含めた日本人たちは何らアクションを起こさず「いやあね」と言うだけだったところを、上記の私が勝手にアメリカ人と断定していたオーストラリア人の夫が、恐らく善意で、凄まじい勢いでそのゴキブリを踏み潰し、そのままフロアの外れまで死体を足で引きずっていき、日本人たちは言葉通じないのを言いことに「何も殺さなくても、野蛮ね」などと言い出し、私は内心「何を生ぬるいことを!」と同胞に対して若干憤りを抱えつつも「殺す必要はないよな」と矛盾する二つの感情を抱え、やはり文化の壁というのは存在するのだな、としみじみとなりつつタロフォフォ滝へ。ここは公園という括りなのだが、えらく寂れているくせにタロフォフォ滝リゾート公園などと名乗っていて、名前に「リゾート」って入れればリゾートになるとでも思っているのかと詰問したくなる上に、リゾートと名乗るために無理矢理設置したとしか思えない回転ブランコやら昭和臭のするホラーハウスなどがありかなり意味不明。しかも遊園地にあるような遊具があったとしてもリゾートじゃないし。リゾートの概念を誤解しているのではなかろうか。更にその一角に横井さんの穴があるんだよ。横井さんまでリゾートに組み込まれているというわけ。
タロフォフォ滝に向かうグアム唯一のケーブルカーに乗り込もうとしたら係員に飼われていると思しきカワイコちゃん(=黒トラの子猫)を発見し、彼(或いは彼女)のシリを追い掛け回していたら他の人に先にケーブルカーに乗られてしまったりもしたが、何とか滝を見、それから先に進んで横井さんの穴に。ここは実際に人が入ると危険なので、入り口には蓋がなされ、脇に穴の断面図があったのだが、よくもこんなところで28年間も暮らしていたものだと驚嘆。米軍に投降するよりもこの生活を選ぶ心理状態に思いを馳せた。しかし聞けば横井さん、食生活は木の実を食べるほか、川でエビやウナギを捕って食べていたそうで、全然カエルじゃないじゃん、寧ろ通風の恐れアリじゃん、と何故か私は憮然とした。横井さんにしてみればいい迷惑だろうが。
それから植物園に連れて行かれてトロピカルフルーツを食べ、件のイグアナのほかに生きたヤシガニを見、大興奮でヤシガニ写真をパシャパシャ取っていたら同行者に怪訝に思われたりしながら帰路についた。まだ夕方だったので、かつてガイドブック編集中にお世話になったカフェに赴き、素性を示さず一介の客としてその店にいたら店の主人(日本人)が電話で話したとき以上に良い人だったので嬉しかった。カフェ・キャット・クレアといいます。ウェスティンの近くです。ただでネットも出来るのでグアムに行かれたら是非、この店にも行ってみてください。
夜、暗くなってからは計画通りビキニに着替え、プールに誰もいない事を確認してから忍び込み、星空を眺めつつプカプカ水に浮いて上機嫌。しかし流石にあっという間に体が冷えてしまったのでそのまま部屋に入って入浴しつつ、ビール片手にエミリオ・ルッスの「戦場の一年」を読み始める。なんというか、極楽だね。これぞ本当のリゾートのヴァカンスだ。体も温まり程よく酔いも回って、気持ちよく就寝できました。
ところでもうこんな日記誰も読んじゃいないでしょ?だって今日はもう22日だもん。これ日付15日だよ。もしここまで読んだ方がおられたら「読んだよ!」と一言だけコメント残してください。誰も残してくれなかったら…、粛々と事実を正面から受け止めようと思います。

*1:この点だけ見てもやはりグアムは日本なんじゃないかと思う。

*2:「エコアドベンチャー・ジャングルハイキングツアー」という結構大層な名前のツアー。ジャングルハイキングって、ジャングルってそんなカジュアルなもの!?と思わずにはいられない。