東京タワー オカンとボクと、時々、オトン

リリー・フランキー著 \1575 扶桑社 ISBN:4594049664
読み終わりました。あまり多くは語る気が無いのですがね、少し泣きました。それで分かったのですけれど、これに泣く人というのは、自分のこれまでの人生などと切り離して、純粋にこの小説の力のみによって泣くのではないですね。もうちょっと説明すると、小説を読んで何らかのものを感じ取る能力というのは勿論その人のそれまでの人生と無関係な筈はなく、どれだけ生きて、感じてきたかとか、どんな本をこれまで読んできたか、どれだけのことを考えてきたか、他にももっとあるとは思うけれど、大まかにはこういった要素によって形成されるものではあると思うので、全く自分の人生と切り離して小説から何かを感じ取るという事はありえないのだけれど、「東京タワー」の場合はこの小説から何かを直接的に感じ取って泣くというよりは、この小説から呼び覚まされた自分の思い出や記憶に対して泣く、という事なんだと思います。
これは決して「完成度が低い」などと言っているわけではないし、親不孝をしている人がいたら「アンタこれ読みなさい」と手渡してやりたいとも思います、などと書くとまず私が率先して手渡されなきゃいけない感じですが私は既に読み終わったのでよいのです。上手く説明できないのですが読後感が「あぁ、いい話だったなぁ」という感じです。つまり読み終わった時点で、感じることだけで頭も心も精一杯になり何も考えられず、感じたことを言語化することもできない類の本ではないという事ですね。面白かったですよ、とても。ただ、本のためにわざわざ時間をとって読書するタイプの人よりは、読書よりももっと上位にやるべきこと、やりたいことがある人が読むほうが、より感動するのではないでしょうか。