「江戸の学び」展

現在両国の江戸東京博物館で催されている「江戸の学び―教育爆発の時代―」展に行ってきた。東京新聞主催のこの展覧会、正月早々の東京新聞の今年の展覧会予定で発見して以来絶対に見に行きたいと思っており、うまい具合に招待券も手に入れたので人を誘って行くことにしたのだが、驚いたことにこの誘った人の職場の同僚が日本でも屈指の往来物の蒐集家であり研究家で、本展示でも彼の所蔵の往来物を多数貸し出しているそうなのだ。会場で一緒に見て回っていたら、展示物につけられた紹介のパネルに書かれた所有者の名前を指差し、これが同じ会社の人、などというので変な感じ。こうかくと展示の規模が小さく取るに足らないもののように感じられる向きもあるかと思うがそれは違う。その同僚の人がなんで会社員やってるのかよくわかんないくらいに凄い人なだけだ。実際どこかの私立大学の客員教授とかそんなポストについているらしいしね。
展示されていた内容はというと、寺子屋のシステムに修得する学問の内容、授業風景が分かるような画が主で、いや、主じゃなかったかも。私が面白く感じたのがそういうものだったので印象深かっただけかも。だってホラ、これ見てよ。この子どものふざけっぷり。最高。私は全然知らなかったのだけれど、寺子屋って割りとゆるいというか、立身出世のための学問を身につけるためではなく、人格形成のために通って勉強をする場所という認識であったので、子どもたちは勉強することを強制されたりはしてなかったらしい。こっちを見ても分かると思うけど、天神机は好き勝手な方向を向いているし、絶対まじめに勉強してないでしょ。それから寺子屋では罰を受ける場合に天神机の上に立たされたり正座させられたりしたらしく、この画の中にもそういう子どもが描かれているけれど、正座している時間を計るために手には線香を持たせられているんだって。
和算も面白かった。和算がどんなもんか全く知らなかったのだけれど、一応これでも理学修士をもつものとして興味はあったのだが、こんな面白いとは思わなかったね。イラスト4点と2進法を利用して相手の干支が何か当てたりと、遊びの中に数学が取り入れられてんの。現代の小学校の算数の授業でもこういうのを取り入れたらいいのに。奉納された算額も展示されてあったよ。いいなぁ、寺子屋先生にだったら私もなりたい。他にも面白い展示は多々あって、例えば問題児に手を焼いている先生の日記とか、滅多にこんなものを見る機会はないのではないかね。どれも興味深くてゆっくり一つ一つ見ていたら、14時半に入館したにも関わらず17時半の閉館までに全部を見切ることができなかった。この展覧会の公式図録は河出書房新社から発行(ISBN:4309760740)されているので、興味のある方は是非。