まだ見ぬ我が子に命名す

この間ヨゼフ・チャペック「こいぬとこねこは愉快な仲間」を読み終わったときに唐突にふと思ったのだが私はブレヒトカレル・チャペックが大層好きである。今までその事実を認識したことはなく、ゆえに熱心に彼らの作品を読んだわけではないのだけれど、なんとなく「好きだなぁ」とじんわりと思ったのでした。ヨゼフを読み終わったタイミングで何故カレルを、と思わないでもなかったが。決してヨゼフが駄目だと言ってるんじゃないですよ。ヨゼフも好きですよ、結構。しかし今読みたいのはカレル・チャペックだ。
ヨゼフ後にカレルを想起したのは兎も角として何ゆえブレヒトか、という点にも考えてみてそれなりに漠とした理由が判明したわけだけれど書きたくないので書きません。そんなことより私はカレル・チャペックが好きだと気付いたので将来子を持ったらその子に「ミラン」という名前を付けようかと思いました、適当に漢字あてて。以前ネットで「ラルク・アン・シエルが好きだから子供の名前はラルク」という人がいたのを目にしたことがありますが、それとおんなじレベルです。いやもっと意味わかんないね。だってさぁ、単純に子供に「カレル」って名前付けたら詰まんないじゃん。それにチェコ人男子の名前なら私は「ミラン」の方が好きだ。ACミランを思い起こさせるその名はイタリアの匂いもして良いではないか。ミラノ行ったことないけど。
そういうわけで子供が生まれたら「ミラン」って名前にします、などという事を能天気に夢想できるのは子供を持つ予定が半永久的になさそうな予感がしているからでしょう。命名する姿勢に本気さが全く感じられません。本気の命名といえば、今年の1月に大学時代の同級生が第2子を出産し上の子も下の子も女の子なのですが、彼女の命名センスはとても素敵でした。世の中には凝りすぎた名前を背負わされた大変な子もいるようですが、彼女の子の名前はどちらも素敵な名前なのに「大変な名前背負わされちゃったね…」という哀愁が皆無です。無条件に素敵だわ、と思える名前です。ここにその名を開陳したい所ですが個人情報を独断で載せるわけにはいかないので堪えます。
私の子の命名については全然本気じゃないのでそんな話は捨て置いて下さって結構なのですが、世の中の人々はどういう心づもりで命名するんですかね。わたしゃ犬猫の名前をつけるんだって苦手なのに。親の、子の名づけに対するスタンスを見ることによってその親子関係が何か垣間見られるのではないかと考察していた時期もありましたが飽きっぽいのでうっちゃってしまいました。熱心に興味をもっていた時分に、手っ取り早いところで自分の両親に私の命名理由を聞いたところ「欧米人が発音し易い名前にしたかったのでそうした」といわれ、実際イタリア滞在中は他の日本人と比べ私の名前は発音が容易く1回で名前を覚えてもらえたもので、両親(というか父)の目論見はしっかり果たされており、私自身もそれまでは「あんまり意義深い命名じゃないな」と思っていたのがすっかり変わって良い名だと思えるようになりました。
私の父は昔から仕事でアメリカに行くことが多いのですが、名前に「彦」という漢字がつき、日本に対して半端に知識をもったアメリカ人に「○ヒコは名前がコで終わってるから女の名前だろう、何で男なのに女の名前なのだ」と質問されたことがあるそうで、それ以外にも兎に角4音節もある名前は発音しにくい上に覚えられにくく、若干苦労をしたそうです。今後子供に命名する機会がありそうな人は参考にして下さい。そして名前にhの音が入る場合も要注意です。イタリア人フランス人はまず発音しませんのでね。アメリカ人に多いのはaをエイと発音することですかね。大蟻食様も英会話学校の教師かなんかに「エイキィ・セイトウ」と呼ばれていたと書いておられましたよ。
名前について書き出すと止まらなくなる傾向があり、今も思わず黒沢明スペイン語のテキストの中では「アキロ・クロサワ」と紹介されていたという話を書きそうになり、今気付いたけど書いてんじゃん、もう。アキラだと女の名前になってしまうので勝手にアキロにされてたんだって。とにかく我が子・ミランの話からは大分逸脱してしまったが、生まれる予定のない我が子なのでそれも致し方がないかもしれません。かわいそうに、名前だけあって実体がない。兎に角私は名前には並々ならぬ関心を抱いておりますので、なんか面白い話を知ってる人は是非教えてください。宜しくお願い致します。