若者に軽んじられる

なんだかもう鳩尾あたりがおかしくって出かける気もせず、夏休みの最後の二日は寝て過ごそうかと思いきやお誘いがあったので新宿へ。道中おなじ電車に乗り合わせた30代の米人と思しき男女が、女性の方がシートに座ってその前に男性が立っていたのだけれど、夏場のおじいちゃんが着ていそうな白いランニングを着た男性の方が途中でどういうわけか調子に乗りはじめて、持っていた蝙蝠傘と呼ぶのが相応しい黒々とした傘をかかげてエアギターの真似事。おいおい、いい年してその態度はどうかね、と思っていたら奴さん傘を取り落として近くに立っていた日本人女性の足に傘の柄が当たっていた。オゥ、アイムソォリィ、ってあんた絶対悪いと思ってないでしょ!と突っ込みたくなる軽薄な態度で、傘をぶつけられた女性の方も少しは憮然とすればいいものを必要以上にフレンドリーな笑顔で身振り手振りで「大丈夫ですよ〜」と伝達。ちっとは怒らんのかァ!卑屈な態度を取りおってからに、ワシだったら眉間にシワを寄せつつ「ハァ〜?」と言いながら相手の頭のてっぺんからつま先まで睨め付けてやるぞ、などということを本気で思うわけもなく、そういう態度をとったら件の米人男性もビビるだろうなと妄想したまでの話。或いは無邪気さと幼児性を装いつつ甲高い可愛い声を無理に出して「エイッ!」とその米人男性の履いていたハーフパンツを背後から勢いよく引きずり降ろしたら面白いだろうな、と考えていたら自分がそんな事を考えていると言う事自体が面白く思えてついニヤケてしまった。
何をしていたんだかもう記憶が定かではないが新宿をふらついて仕上げに高円寺にある日本で唯一の生麺のフォーを出す店でフォーを食し、さてそろそろ帰るかね、と腰を上げたら人身事故。もうお願いだから中央線で死ぬのはヤメテクダサイ!中央線は人身事故が多すぎです。家人に電話し人身事故だから帰宅が遅くなると言うとやや迷惑そうに、しかしその迷惑に思っている気持ちを押し隠そうと努力しつつ「…帰ってくるの、大変だと思うから、誰かに泊めてもらったら?」だってさ。家出を推奨されてしまったので人んちに泊めてもらいました。知人の家に向かう道中、数人、徒党をくむ若者たちとすれ違いざまに足捌きが上手く行かなかったのか若者の内の一人に足を軽く蹴られてしまったのだけれど、その時私は若そうな服(というか若い頃の服)を着用していた所為か実際よりも大幅に若く見られたようで大変気安く「ごめんねぇ〜」と言われた。ふざけるな!私はキミらよりも確実に十は老けているのだぞ。後姿じゃ分からんかも知らんがな、正面見たら吃驚して腰抜かすぞコラ。…若い頃の服を未だに着ている私が悪かったのでしょうか。