久兵衛

銀座の久兵衛でお鮨をいただく。わ〜い3年振りだぞ、久兵衛は。思い起こせば3年前は気持ちの悪い男と久兵衛に行ったのであった。いや、行く直前までは気持ちの悪い男だとは知らなかったんだけどさ、学生時代のサークルの先輩だったし。久兵衛に行く直前まで私はイタリアに滞在していたのだけれど、向こうで生活しているときに非常に暇で、それで今では想像がつかんが割りと毎日まめにいろんな人に暇つぶしでメールを送っていて*1、そんな暇つぶしメールにこれまたまめにレスを返してくれる人はその先輩ぐらいしかおらず、頻繁にやりとりをしていたら何となくこう、次第に色恋の気配が漂い始め、私が帰国する頃には完全に向こうは盛り上がっちゃってたのでこちらの都合などお構いなしに上京してきてしまい、私自身はというと数年は会っていない相手だったから実際に再び会ってみないと分からないとは思いつつも、イタリアから帰国した理由というのがそもそも体調不良だったので正直言って具合悪いから東京まで出てこられても相手するのは面倒くさいし迷惑だな、と思ったのだが断りきれずに銀座まで出向いたのであった。
しかしまあなんというか、学生時代はただの先輩と後輩という間柄で先方がこちらに色目を使ってくることもなかったので知らなんだが、大分性欲が強くて自分でもどうにもその欲求を制御できないタイプの人だったようで。久しぶりに会ったというのにこちらの顔を見るのではなく終始一貫して私の体ばっかり見てるんだよ。特に胸のあたり。ほんと気持ち悪いな。だから再会して即座に「コイツキモイ、早く帰りたい」と思ったのだけれどどうにも切り出しにくく、仕方ないのでとりあえずお昼でも食べて適当にお茶を濁して帰ろうと思って久兵衛に行き、そうしたら頼んでもいないのに私に鮨をおごりやがって、で私はというとイタリア滞在の最後の1ヶ月間はずーっと毎日熱が37度ちょっとあって、日本に帰ってきてもまだ熱が下がっていなかったこともあり、お店を出た頃には案の定具合が悪くなり、仕方なくマリアージュ・フレールに行ってお茶を飲みつつ帰れる程度にまで体が持ち直すのを待つことにしたんだけれど、あろうことかその気持ちの悪い男は「そんなに具合が悪いまま帰すわけにはいかないから、これからホテルに行こう」と言ったのだよ。ほんと死ねばいいのに。
久兵衛の話であった。初めて行った時はその気持ちの悪い男と行った時よりも更に2年くらい前だったのだけれど、そのときの印象は非常によく、で2回目の時のは不愉快な記憶と共に封印していたので、本日が実質的には2回目くらいの印象。60人の団体さんが来ていたらしく、お店の中は大忙しだったようだけれど、お鮨は無論とてもおいしかったです。最初に握りが出てきて、その中でも印象深かったのはアワビと海老。アワビおいしいね。生と蒸したのと選べたので私は蒸しアワビを選んだのだけれど、口いっぱいにアワビの味が広がって、至福の時とはまさにこのこと。海老は海老で、これは生だったのだけれど、身がかなりしっかりしていて食感を楽しむことも出来るくらい。おいしかったなぁ。マグロは私は元々、子供の頃に散々トロを食べ過ぎてしまったので今では赤身の方がすきなのだけれど、久兵衛のトロの脂は品がよいので美味しくいただけました。美味しくないトロの脂は下品でしつこいからねぇ。
握りを食べ終わった後はのり巻きと一緒に穴子が出てきたのだけれど、この穴子が絶品。鮨ねたの中では穴子が一番好きで、どこの鮨屋でも必ず穴子を食べる私であるけれど、ここの穴子はそこいらの店の穴子とはレベルが違いました。タレと塩と2つ出てきたのだけれど、味付けがよい、とかそういうお話ではなく、穴子そのものの持つ味が非常にしっかりしており、あんなに美味しい穴子は私は食べたことがないよ。タレがついてしまうとタレの味が勝つ店も多いけれど、久兵衛ではあくまで穴子の味を引き立てる程度にしかタレを乗せていないのでほんと最高。おいしかったなぁ。
お昼は4000円くらいのと5500円くらいの握りのセットと、あとはお好みが8000円くらいなのだが、4000円のセットだとアワビも穴子もつかないので、5500円くらいのを食べた方がよいです。私は初めて行った時が個室で、気持ちの悪い男と行った時がカウンターで、今回は個室ではないお座敷だったのだけれど、その3回を比べるなら、個室かカウンターがお勧めです。個室での接客は勿論気分がよいし、カウンターでは職人との会話が楽しめるので。普通のお座敷だと、職人と話が出来るわけでもなく、他の客に騒がしい中年女性の集団がいたりして辺り構わずフラッシュたいて写真取りまくってたりすると若干興ざめするのでいまいちです。ただ、私自身も、然程大きな声ではないけれど、長野の人々は虫を食う、とか、タイでは一部ゴキブリすら食う人々がいる、などと話していたので、その話が他に聞かれていたとしたらきっと嫌がられていたことでしょう。もっとも、お互いの写真の取り合いに興じている人々には、そんな隣の客の話が耳に入る余地などないでしょうが。

*1:最近では自分からメールを送ることはまずなく、人様からいただいたメールのレスにも最速で3日くらいかかる。