バタつきパンにクリスマス・プディング

子どものころに読んだ外国の本に出てくる食べ物。これが妙においしそうに感じたことを思い出した。バタつきパン。単にバターをぬったパンだろうに、こう表記するだけで身近にあるパンとはまったく別の、何か特別なパンに思えたものだった。クリスマス・プディング。その年のクリスマスが終わるとすぐ、翌年に向けて作っておき、約1年保存が出来るプディングだとか。バタつきパンはともかく、このクリスマス・プディングがどうしても食べてみたくて、4年前にロンドンに行ったときにハロッズで買ってきたのだ。
ブツはクリスマスまで保存しておき、インストラクション通りに蒸し器で蒸して食べてみた。
…めちゃくちゃ不味い。
こんな不味い食品には、初めてお目にかかった。*1ロンドンで食べた食事も不味かったが*2、それとはまた別次元の、譬えようもない不味さ。食べてはいけないモノなのでは、と不安を覚える。そして見た目も、いったい何が入っているのか推し量ることを拒否するかのような黒色。一緒に食した家族も全員失語症である。食べ始める前は皆、軽く興奮してクリスマス・プディングに対する期待について饒舌になっていたのに。如何ともし難く、無言でゴミ箱へと片付けました。
マイミクのgraceさんによると、ナルニアで魔女が誘惑に使ったトルコぎゅうひ(Turkish delight)も相当不味かったそうである。なんだか体に悪そうな、いや〜な味がしたとか。イギリス人の味覚は謎だ。スコーンやら何やらは本当に美味しいのに。あれらを美味しいと思える味覚があるのなら、あんな味のクリスマス・プディングなど食べられるわけはないと思うのだが。ということはつまり、スコーンやらの美味しさが、どれくらい美味しいのか分かっていないということだろうか。日本人の物差しでイギリス人の味覚を計っているのが、そもそも間違いのような気もするが、とにかく児童文学で出てきた食品に幻想を抱くのは危険である。

*1:その2年後にこれを上回る不味さのものに出会った。チャイナエアライン機内食のことだ。

*2:ハイティーだけは美味しかった。