ドイツに対して勘違いし始める

私が今住んでいる家には生まれてからまだ5ヶ月の子猫がいるのだが、ドイツ人サビーナはkittenという語を知らないのでいつもその猫を「ヤング」というのである。ヤングキャットはヤングなだけあって、そのはしゃぎっぷりといったら大変な騒ぎで、私とサビーナがお互いたどたどしい英語で会話をしていると出し抜けに私のひざに飛び乗ってきて脅かしてきたり、今度はサビーナのひざで大人しくしていると思ったら唐突にサビーナにビンタを食らわしたり。どこかに走っていったと思ったら自分の体長の3倍はあるクリスマス用の飾りの銀モールを口にくわえて誇らしげに凱旋してきたり。ようやく静かになったと思ったら階段の踊り場か何かからガシャーンと陶器の類が壊れる音がしたり。これが若さというものか、とか何とかクワトロ・バジーナがいってたような気がしたが、大体そんな感じ。
そんな環境でサビーナと会話をしていたら今度は彼女が自分の目の前にあるグラスを倒しかけ、あなたも猫になったの?とか言おうとしたらその言葉を待たずに、低音かつ魔女の使いのような雰囲気で「ニャ〜オ」と猫のモノマネをされた。あ〜、この情景、めちゃくちゃ面白かったんだけど、私の文章力じゃ伝わんないんだろうな。今でも思い起こすと笑っちゃうくらいなのにな。あ〜あ。
サビーナの話は30%くらいドイツ語が混じっていて難解なのだが、というのも私が自身の英語力に自信がないからこそ相手の言うことを懸命に理解しようという姿勢を示しているのにいつの間にかドイツ語になっていて、その事実になかなか気づかないからなのだけど、しかし結構面白いのである。今日聞いたのはこんな話。10年とか20年位前は飛行機で旅行するのがまだそんなに安くなく、ドイツの多くの人々は車輪つきの家を持っていて、その車輪つき家を車に連結してその状態でヨーロッパ中を旅行したのだという。その家で料理もできるし睡眠もとれるというのでなんというかこう、楽しそうじゃないですか! しかし多くの主婦にとっては好ましくなく、というのも休暇といえども「家付き」で旅行するから家事に追われるわけで、全然ヴァカンスらしくないじゃない! ということで現在では廃れてしまったらしい。この車輪つき家のことをドイツ語でwohnwagenというのだけど、もう全然なくなっちゃったんですかね。ぜひwohnwagenで旅行してみたい。
それから以前私が見た「グッバイ!レーニン」という映画の話をしたらサビーナ大興奮。日本人があの栄が見てるなんてクールだ!って。各国の映画は見ておくもんですね。そんなこんなでここ数日ドイツの話ばかり。ドイツにはアップフェルワインといってリンゴのワインがあるらしく、それも飲んでみたい。サビーナの話を聞いて、いいじゃん、ドイツ面白いじゃん、行ってみたいしドイツ語できるようになりたい、と英語すらままならないくせにそんなことを思い始めたりして。しかしこれ、別にドイツが面白いんじゃなくて単にサビーナが面白いだけなんじゃないかと疑いを抱いているのですが。そして我々がお互いに流暢に英語が話せたとしたらこんなに面白くなかったんじゃないか、とも思うのですが。