話題の選び方がstupid

T.Y.さんの夢を見てしまった。編集をしていた頃のことは「あの頃は大変だったなぁ」と遠い目をして回想する程度には過去のことになっているのだが、つい昨日、当時のことをリアルに思い出したら具合が悪くなってしまった。吃驚。そして気持ち悪さの根源のひとつにT.Y.さんがいて、彼女は元、私の勤めていた編プロの社員で、社長の愛人になると同時(かどうかは知らんが)にフリーライターになったのだが、そういう経緯のために大変な人だったのである。やりたい放題で誰も止められる人がいないの。なんでかわからんが、夜中に会社に電話してきて「昔グアムで取材したときに、ドライブのページ用の写真撮影で黄色いオープンカーに乗って写真を撮ったらグアムでそれが流行った」とかよく分からん自慢話で3時間。つらかったなぁ。唯でさえ忙しいから徹夜して週に5時間とかの睡眠で頑張ってんのに、こんな話で3時間。そしてよく電話してくるんだわ、どうでもいい話で。友達がいなかったに違いない。彼女にはブログをはじめることを提言すべきであったと今更ながら後悔。そして昨日の夢ではなぜか彼女は非常に性格が丸くなっていて、私に対してとても親切にしてくれるのだけれど、その親切さの促すままになってたらいつのまにかプロの劇団の舞台にいきなり立つことになり、せりふも役どころも何も知らないのに何か喋らなくっちゃいけなくてもうしどろもどろ。私がマヤだったら、きっともっと巧くやったことでしょう*1
さて、最終週。本日は先生が歯痛のためにお休み。代わりにきた学校職員が「辞書なしでエッセイ書いてみて」と。それは何とかやって、添削でいろいろ直されたのだけれど、その後が「ではちょっとした議論をしよう」と。ちなみに今週は新しい生徒が2人来て、一人は最初私は日本人かと思ったのだけれどカザフスタンの人で、もう一人はカザフスタン在住のポーランド人。二人は全然知り合いではない。カザフスタンの人、初めて出会ったよ。日本人というよりは、どっちかというと朝青龍系(つまりモンゴルに近い)。中央アジアの人って東南アジアの人よりもずっと日本人に似ているのね。吃驚。
議論の話であった。学校職員のジョージが「英語は世界で一番簡単な言語だ。それについて今から君たちを納得させられると私は確信している、が、その前に君たちの意見を聞こうか」と。要するにですね、英語の名詞には性がないから簡単で、動詞の活用もロマンス語、スラブ系言語、アラビア語に比べたら極めてシンプル。名詞に性がないから冠詞も簡単だし、複数だろうが単数だろうが「the」でかまわん、という話なんですよ。ナンセンスだな。日本語なんかそもそも語順というものがヨーロッパの言語とはまったく違うし、冠詞なんか「簡単」とか言う以前に存在していないし、「ロマンス語その他に比べて簡単」な動詞の活用だけれど、日本語の場合主語が代わったところで動詞なんか変化しないもんな。要するに彼の言う「世界で一番簡単」は「ヨーロッパおよびその近辺で一番簡単」ということなんすよ。だから色々説明して、日本語と比較した場合に「世界で一番簡単」は成り立たない、ということを納得させたのだけれど、彼はその後も「英語の簡単さ」を述べる予定でいたから、その予定を変更することができずに結局我々日本人二人に半ば背を向けてロシア人、ポーランド人、カザフスタン人(ロシア語を解す)に向かって説明してんの、英語が簡単だって。
というかそもそもこの話のテーマがくだらないよな。ヨーロッパの人間にとって本当に簡単なら、今彼らはこの学校にいないはずで、少なくとも彼らは現在英語学習の必要性を感じてるから学校に来てるわけだ。それに対して「ほらごらん、英語はこんなに簡単なんだよ」とか言ってみるのは、なんちゅうかその、子供だましだわな。彼の言う「簡単だよ」について異論を唱える気にすらならん、ばかばかしくて。知ってるし、別に、文法的にはシンプルだって。でも喋れてないから学校にお金払ってんだよ。「簡単」と言われたら「で、だから?」としか言いようがないよ。
その後唐突に「英語簡単」を切り上げて「ミリオネアになりたいか?そうか、みんななりたいか。しかし私はなりたくない。ということでミリオネアになることが素晴らしいということを私に納得させてみるのだ」と。興味ないし。なりたくないならそれでいいじゃねぇか、と思うのは私だけでしょうか。ロシア人の女の子(19歳)が「もしミリオネアになったらイギリスの大学に留学できるし不動産も買える」と言うと「ミリオネアじゃなくとも留学はできる。もし今の状態でできないというなら本当に留学したいとは思っていないということだ」だって。ポーランド人が「ミリオネアになったら世界中好きなところを旅行できる」と。それに対しては「今の君のこの滞在費は自分で払ってるの?そう、夫が払ってるんだ。君の夫はミリオネア?違うよね。でも旅行できてるじゃないか。今すぐ夫にSMSを送るのだ。"あなたはミリオネアじゃないけれど、私にとってはミリオネアよ!"って」。…疲れる。私にも意見が求められたので「ミリオネアになったら働かなくてすむ」と答えると「私は今67歳で、前は大学の教授をしていて一度引退し、趣味に生きていたのだけれど、何かをしたい、それは何か、私は教えたいんだ!と気づいたから今こうして働いているのだ。年金で生活はできるけれど、自ら望んで仕事をしているのだ」と。面倒くせぇ…、それはアナタの話で私には関係ないのでは? そして最後は「私はミリオネアにはなりたくない、ミリオネアになったら多くの人がたかってくるだろう。つまり彼らは孤独なのだ!私は今ミリオネアではないけれど友人がたくさんいて、楽しい日々を送っている。」と。つい「金持ちになったとたんに豹変するような友人は、最初から本質的には友達ではないのでは?」と思ったのだけれど彼のお説が続いていたために口を挟めず。締めは「そしてミリオネアはみんな若死にしている!ジェームス・ディーン、ダイアナ妃…」って、それは極論というものでは? そして若死にしているから自動的に不幸であるとは断定できないと思うのだが。
と、こうして書いているうちにまた気づいたのだけれど、この議論の趣旨は「議論すること」ではなくて「英語を話すこと」であった。前にも一回気づいた筈なんだけれどなぁ、また忘れてつい熱くなってしまったよ。しかしこう、もうちょっと何か実りのある議論のテーマってないですかね。あんまりにも馬鹿馬鹿しくって、本日はだいぶウンザリいたしました。我々のクラスの担当教員、マリー・アントワネットの歯痛が改善されることを切に望む。

*1:違う内容の台本を覚えされられて舞台の上で立ち往生、しかし亜弓さんとの丁々発止のやり取りで見事切り抜けるのであった。