プルッと鳴く鳥

久々に18きっぷで遠出。といっても名古屋に比べたら全然近場だ。行く先は水戸の偕楽園。始発電車に乗って水戸に着いたのは8時過ぎか。上野から乗った常磐線は早朝6時半頃の電車であったのに、同じボックスに乗り合わせた50代と思しき男性がもうチューハイとか飲みはじめてんの。徹夜明けかなにかだろうか。スナック菓子をポリポリやりながら酒を飲み、途中で食べ終わった菓子の入った袋は座席の下にいれ、酒が飲み終わったら今度はその缶も潰して座席の下に。飲みきれてなかったみたいでちょっとこぼれてんの。降車の際にちゃんと持って帰るかと思ったらそのまんま。私にしては珍しく、禁煙ファシスト・モモコさん並の眼力でジィ〜っと見つめてやったが私の眼力にはなんら効力はなかった。すげぇな、モモコさん。あの人眼力だけで禁煙席に座って喫煙していた男女に「ごめんなさい」って言わせてたぞ。私の目には力がない。
前日2時間半しか寝ていないにも関わらず車中で一睡もしなかった私は水戸についた頃にはもうフラフラ。到着したそのとき、朝8時はまさにモーニングタイム真っ最中なので、男気モーニング実践者としては根性で喫茶店を見つけるべきだったのだが眠気に負けて駅にあったエクセルシオールカフェで妥協してしまった。モーニング実践者失格である。先だっては名古屋まで出向いてフルタイムモーニング喫茶の検分をしたというのに…! この体たらく。職業をもつと人はこうまで堕落するものなのか。やはり前日の残業の影響で、水戸における喫茶店分布のチェックが出来なかったのが敗因といえよう。しかしエクセルシオールカフェのモーニングのチャバッタサンドは、そこそこのものであった。
バスに乗り込み偕楽園へ。いいねぇ、入場無料だよ。いいねぇ。しかし梅は9割がた散っていた。でもいいの、楽しかったから。2年ほど前に20代の若者とデートをした折にとある植物園に行ったが、一般に誰もが植物園に期待する花が一切さいておらず、万年青というか、青々とした植物が「勝手に生えている」といった風情でいたのを思い出させた。ちなみにその時は20代の若者に「愛妻弁当が食べたい」と無理強いして手弁当で来させたが、彼はそのときのことを恨んでいるだろうか。しかし過去のことなので、もうどうでもよい。竹林の見つつ歩き、しばらく進むと道が線路と平行し、時々そこを通過する電車に見とれたりしていると、進行方向に紫色の大振り袖を着用した若い女性2名とカメラマンが。カメラマンがその女性たちに「お!いまのその表情いいよ!いいねぇ!」と、なんだかいやらしい声のかけ方をしつつ写真を撮っていて、ああいうカメラマンって本当にいるんだな、とやや感心。彼女たちは梅大使とかそういう文言の書かれたたすきをかけていた。梅祭りだからなのだな。しかし然程美人じゃなかったのが残念である。
しばらく進むと広い場所に出て、土産物屋があったり観光協会のテントがあったりで危うく高齢者によるボランティアガイドに園内をガイドされかけたのを間一髪ですり抜け、さらに行くとまたあの着物を着た梅の連中が。着物なのにもうここまで移動してきたのか、早いな。流石地元、ショートカットを熟知しているに違いない、などと思いながらさらに進むとまた彼女らが。「また梅野郎かよ」と何でかよく分からんが根拠なく毒づいたのだが、どうもその梅の連中は最初に見た2名だけでなく、何人もいるらしい。だからか? さっきの二人が然程美人じゃなかったのか。頭数が必要になると美人度の平均値が下がるのだろう。その後好文亭の内部を見学*1し、偕楽橋を渡って千波湖へ。
千波湖には沢山の鳥たちがいた。白鳥やら鴨やら。白鳥によく似ているのだが全身真っ黒でくちばしは赤いんだけど先の方だけ白いラインの入っているやつやら。鴨の中に頭の色がグレーで首元から白い色になっているのがいたのだが、色調が格式高そうというか、貴族の家にいる家政婦っぽい厳しさを感じさせたので勝手にロッテンマイヤーさんと命名。3歳くらいの子供が白鳥に餌をやろうとパンくずを投げたのだがロッテンマイヤーさん、意外と卑しく猛スピードで白鳥が食べる前にそのパンくずの大半を食ってしまっていた。しばらく進んだら湖にいる鳥たちの名前と特徴の書かれた看板があったのだが、ロッテンマイヤーさんの正式名称は忘れちゃったなぁ。白鳥の欄を見ると正式名称は「コブハクチョウ」で、「カモ科」とあったので、ひょっとしてここにいる鳥は皆カモ科なのか? と鴨たちの欄を見たら連中は皆「ガンカモ科」であった。カモ科の鴨というのはいないのかね? そして再びロッテンマイヤーさんの欄を見たら説明文の最後に唐突に「鳴き声はプルッ」と書いてあって、この「プルッ」が大いに気に入ってしまった。プルッだってよ。変なの。どんな鳴き声なんだよ。プルッなんて鳴き方の鳥、見たことないぞ、と思っていたらプルッと鳴いた。文字にしたらプルッとしかあらわしようのない鳴き声だったよ。面白かった。そしてこんな鳥と鳥の案内板だけで楽しめている自分自身が面白かった。
疲れてきてしまったので昼過ぎには再び電車で東京方面に向かい、途中で無性にショートケーキが食べたくなってしまったので、上野から池袋に向かう間にどこか良い店はないか脳内データベースを検索したら巣鴨のフレンチパウンドハウスの名がヒット。前々から行ってみたいと思いつつ行ったことがなかったんだけれど、いや〜、美味しかった。生クリームにリキュールとイチゴ果汁を混ぜたタイプとノーマルのショートケーキと2種類あったけど、どっちも美味かったね。これ、ときわ台に支店があるんだって。どうせ支店を作るのなら池袋あたりにしてくれたら良かったのだが。そんでもって夜は久々に池袋の硯家でかんぱちの刺身と菜の花のおひたし、白子の天ぷらを肴にビール。最後にカレーうどん。今日一日何をしたかと振り返ると何をしたのか良く分からない一日であったが、非常に満足。やっぱり18きっぷはステキだね! 来週末は私、房総族になる予定です。無論18きっぷで。

*1:地方の観光地にありがちな見学者ノートがここにもあり、ちょっと見たら面白かった。「love・liteture・cotage」とあり、なんだこれ?と思ったのだが、どうやら「liteture」は「literature」、「cotage」は「cottage」の間違いで、「好文亭」を漢字一文字ずつ英訳しようとしたものだったらしい。なぜそういうことをやりたくなってしまったのだろうか。そこが気になる