鬼平を薦める女子がいる

最近だいぶ大人になった私は、さほど親しくない人が本を読んでいてもかつてのように『何を読んでるんですか?』などと質問しなくなった。だいたいその手の質問をして話が弾んだためしがないことに漸く気づいたということだな。で、現在隣で仕事をしている若い男子が昼休みになると熱心に何やら本を読んでいるので、何読んでんのかな〜、と気にしつつも、きっと『質問しなければよかった』と後悔するような事態になるに違いない、と質問を自粛。そしたらふとした拍子にタイトルが見えたのだが、著者名は明らかにしないが割と若い女子に喜ばれそうな本であった。やっぱ質問しなくってよかったじゃん、読んだことない作家だし、などと思ってたら逆にこっちが質問されちゃったよ。何読んでんですかって。
私が何を読んでいるかって? 『社会学がわかる事典』だよ。う〜ん…、恥ずかしい。なんだよ、悪いかよ。ちょっと興味が出たんだよ、社会学に。なのになのに、件の若い男子には「えー、難しい本読んでるんだね」だって。…もう私に何を読んでいるか聞かないでください。
そして今日、朝仕事場に来てみると例の彼が三崎亜記『となり町戦争』を読んでいる。これ、ちょっと気になってたんだよね。どう? 面白い? と聞いてみたら、
「う〜ん、全然つかみ所のない話なんだよね…。それより何かおすすめの恋愛小説知らない?」
この私に恋愛小説のおすすめを聞くとは! 非常に苦手分野だよ。殆ど読んだことないよ。困惑して矛先をそらそうと向かい側に座っている若い女子に「恋愛小説が読みたいって言ってるんだけど、何かしらない?」と話を振ってみたら。
鬼平いいよ」
れ、恋愛小説のおすすめを聞かれて『鬼平』を薦めてくる女子がいるとは…。彼女の雰囲気からしたらいくらでも恋愛小説知ってそうだったから話を振ってみたのだが、人間やはり見た目では分からんものですね。意外性が楽しいものである。