赤字を入れると怒る人

現在私は校正の仕事をしているのだが、数多いるDTPオペレータのうち、校正紙に赤字を入れて戻すと怒る人がいるのでややビクビクしながら仕事をしている。出力された物から順に校正を行っているので、出力された物の山から自分が校正する物を選ぶときには『どうかあの人のが当たりませんように』と念じながら引き、当たってしまったときには心中『○○さん、ガンバレ! あなたならきっとできる! きっとノーミスで校了だ』と赤字を入れずに済むように、件の怖いオペレータさんのことを励ましながら校正を行っている。もう出力されちゃってるんだから校正の時点で心の中で励ましても手遅れなのだが。
しかしこういうの、性格でますね。打ち文字に殆ど誤変換なくほぼ毎回、原稿通りのものを出してくるオペレータさんもいれば、どうせ校正してもらうんだから適当でいいや、と思っているとしか思えないオペレータさんもいて、私が恐れている例の人はその後者である。赤字入れられて怒るくらいならちゃんと作ってくれよー、と言ってみたいのだけれど怖いのでむろん言えるわけなどない。赤字を出して怒られるくらいなら私に修正させてくれ、とも思うのだが、今回の私の仕事はあくまで校正なので、出過ぎたまねをするのもねぇ。
ここ数日はその怖いオペレータさんのが当たらずに済んでいて僥倖僥倖、などと思っていたら本日久しぶりに当たってしまい、心なしかおびえつつ校正をしていたのだけれど幸い赤字の量も非常に少なく、とても心軽く戻しにいくことができた。「お願いします」と手渡すときの声もやや明るくってさ。そしたら相手も非常に明るい声で「はーい」と受け取ってくれたのだよ! どうしちゃったの!?○○さん!! 今日は機嫌が良かったらしい。アレだな。道を尋ねてきたギャルに丁寧に教えてやって、礼儀正しく『ありがとうございます』と言われた時とおなじくらいに、○○さんが良い人に見えた。つまり、はなから礼儀正しさなど求めていない相手に予想外に感じよく対応されると、その対応自体は人として非常に普通のものなのにも関わらず、そのギャップから過剰に良い人に見えてしまうのだ。○○さんと友達になれるんじゃないかと思っちゃった。間違いなく錯覚だけど。
そういうわけで私の中でいま、○○さんの印象はそう悪くないのだが、冷静になって明日の仕事のことを考えると、やっぱり○○さんには当たりたくないな、と思うのであった。だって怒られるの怖いからやだもんね。赤入れ殆ど無用のオペレータさんにあたりたいものである。