おばちゃんと呼ばれる職業

フラン

今日はエルメでケーキを買わなかった。メゾン・カイザーでフランを買ったが、見た目がどれくらいケーキに似ていようがパン屋で購入したこれはれっきとしたパンだ。だってパン屋で売られてたんだよ? パンに決まってるじゃん。だから今日はケーキを食べていない。よって今のこの状態は『ケーキ食べ過ぎバカ時代』の再来ではない。
職場にちょっと注目している人がいるのだが、それは推定40歳、非常に恰幅のよい女性で、何をきっかけに注目しだしたかというと、ある夏の日にふとその人の着ていたTシャツに目をやったらTシャツの前面を覆いきるくらいに大きなアトムの顔が描かれていたからで、そのとき私はぼんやりとしながら『どこで購入したのだろう』『こういう製品が世の中にはあるものなのか』と思ったのであった。それから暫くして、またふとその人の着ている服に目をやると、今度は水玉模様のシャツを着ているようだった。しかし近づくにつれてその水玉の形がいびつであることに気づき、よく見たらその水玉の一つ一つが全部アトムであった。よっぽどアトムが好きなのだろう。
それから最近まではしばらくその人のことを忘れていたのであるけれど、つい先日、お昼休みに遠くの方からその人の話し声が聞こえてきて、しかも大分興奮しているようである。昼休みは主に読書に時間をあてている私としてはその声の高さをやや迷惑に思ったりしたのだが、いやいや、本当に本に集中していたら人の話し声など気にならない筈だ、気になるのは私が至らないからだ、と自分を戒め、本の世界に再び没入しようとしたその時である。『私はパズーみたいな王子様を待ってるの! だからこのトシまで独身なんだよ!』。後半はやや怒声であった。そしてパズーは王子様ではない。この台詞のあとはしばらくキャンディ・キャンディの目のでかさにご立腹のようであった。
と、かくも個性的で、オリジナリティを大事にしていると言うか、なにか彼女なりのこだわりがあるのだろう、と感じさせる彼女であるが、昨日ショッキングな出来事が。通勤に使ってるバッグがヴィトンであることが判明。一気に俗っぽくなっちゃったよ! なんでそこだけフツーのOL風なのだ。残念である。もっと個性を大事にしてほしい。キャラクター物とヴィトンの組み合わせで私がスバラシイと思ったのはただ一例のみ。もう10年くらい前になるが、電車に乗っていた時に母親に連れられた幼稚園児が母親の趣味でヴィトンのバッグを斜めがけさせられているのを目撃したことがあり、その女児がバッグのファスナーを開けてやおら取り出した物といったらガンダム的なおもちゃかなにかであった。しかもあつらえたかのようにバッグのサイズにそのおもちゃ(プラモか?)ぴったり収まっていたのである。あれはすてきな使い方であった。それと比すると大人のアトム服+ヴィトンの組み合わせはねぇ。もうちょっと面白みとか意外性が欲しいね。
意外性といえば今日職場で、いままで一言も話したことのない(というかその存在を今日初めて認識した)人が着ていたシャツの背中に『forgive』と書いてあった。心の中で『許す』と言ってあげた。許されたよ、ヨカッタネ!
しかし今気がついたのだが、あの『forgive』はひょっとして、私のことを『許す』と言っていたのだろうか。だって別に『forgive me』って書いてあったわけじゃないもんな。人を許していい気になってた私の方が許されてたよ! ショック!
今日は本当は『おばちゃんと呼ばれる職業』について書こうと思ったのだが、本来の目的に達する前に力つきてしまった。エッセンスだけ書くと、仕事中に雪隠に行くと女子トイレが非常に混んでおり、列の中に今の職場で一番偉い人(50歳よりちょっと若いくらいか)がいたのだが、その偉い人がトイレットペーパーのストックを確認するとストックが尽きていた。その偉い人は『掃除のおばちゃん、気づいて持ってきてくれるかな』と言っていたのだが、そのとき私は気づいたのである。老若男女問わず、誰からも『おばちゃん』と呼ばれてしまう職業が存在することに。ていうかまあ平たく言うと、その偉い人に対して『自分だっておばちゃんじゃん』って思ったっちゅう話である。無論この私も10代の者から見たら十分おばちゃんなわけだが。