背中にモギケン

背中に文字を書いて当てる遊びが好きだ。気が向くとうちのやつの背中に文字を書いているのだが、いい加減相手するのが面倒らしく、ずいぶん対応が投げやりで不愉快。以前、こんな事件があった。私がやつの背中に文字を書くと、すぐには判然としなかったようで、「なに? わかんない。もう一回」。もう一回書いてみると、「“た”? 違う? なんだ…」。もう一回書いてやると、「“サ”か」とようやくわかった様子。続いて二文字目を書こうと指を背中に当てるやいなや、事件は起こった。
「“ト”」
なんでまだ何も書いてないのに私が背中に「サトウ(仮名)」と書こうとしてることが分かっちゃってるんだ!! 私は行動を読まれるのが大嫌いなのである。なのにこの態度。許すまじ、サトウ(仮名)。ヒステリーを起して「キーッ!」とか何とか叫び、「なんでそういうことすんのよ! なにも書いてないのに!」と憤りをあらわにすると、「だったらなんで背中に苗字書くんだよ。おかしいダロ」といかにも冷静な反応である。ちなみにこの事件は現在まで『サトウの“ト”事件』として語り継がれている。
つれない態度の相手の背中に『サトウ』と書くのにも飽きてきたある日、ちょっと私の背中にも文字を書いてみたまえ、と指令を下してみた。最初の一文字目は、「“モ”か」。二文字目は…、「ちょっとアンタ、ひとの背中に“モギケン”って書くのやめてよ! 背中が汚れるでしょ!」。そう叫んだら「自分だって同じことしてんじゃん。全部書かれる前に当ててるじゃん」とまたしても冷静なご様子。激昂する人間に冷静な態度は、火に油を注ぐだけだなぁ。
それにしても『モギケン』である。背中に『モギケン』と書かれかけた女が私のほかにいるだろうか。脳裏にまざまざと浮かぶのは茂木健一郎のもじゃもじゃ頭…。うわぁあっ! モギケン! 背中にモギケンがぁ〜! 再び、許すまじ、サトウ(仮名)、である。
なんでこんな日記書いたかって? 仕事に行ったけどヒマだったから。具合悪いのに出社してんのによ〜、こんなにヒマってどういうことなんだよ〜。誰かどうにかしてくれ。家で休んでるのに給料が発生する仕組みを考えてくれ。