レギスタン号にてサマルカンドへ

朝食を5時半に頼んでおり、時間ぴったりにレストランに行くと完全消灯で誰もいない。どうしようかな、と思ったら暗闇の中に昨日のドライバーが。アンタもう迎えに来たんか! 約束は6時のはずだが。早すぎるだろ。しかし彼がどうにかしてくれ、朝食にありつけた。
どんなもん食べたかというと、2年も持つという噂のパンとゆで卵、ケーキ。お茶は中国茶みたいで美味しかったなー。パンは、堅かった。既に年代物とか? だいたい2年日持ちするってどういうことだよ。2年て、3年は持たないってことでしよ。じゃあ2年半だったらどうなんだ。2年と3ヵ月は? 2年と1日は大丈夫なんでしょ?きっと。明確な賞味期限がわからない。
タシケント駅は日本でいったら東京駅に相当するんだろうが、朝7時の時点で夜が明けてないのに超省エネでだいぶ暗かった。写真を撮りたい気もしたが、地下鉄駅なんかで写真撮るとカメラ没収らしいので、鉄道駅でも慎重になることに。列車はコンパートメントになっていて、ウズベク男性に囲まれたらどうするか、とやや焦ったが実際は6人中4人が女性で一安心。しかし車内で延々とウズベクのポップスがかかってたのはなんなのかね。
というわけで現在ウズベクポップス聴きながら出発を待っているところ。朝7時といったら日本時間で11時なのだが、なんでこんなに眠いのか。眠いよー。
そういや駅までの車の中で運ちゃんが、自分はカトリックだ、おまえの宗教はなんだ、と無宗教とでも答えたら襲われそうな目力で尋ねてきて、ビビりつつも「ブ、ブディストです」と答えたのだが、やっぱり何か宗教もってたら尊重してくれたりするのかね。だとしたら今度旅行する時は、ヘタクソな木彫りのブッダレリーフでも作って首から下げ、胡乱な輩がよからぬ動きを見せたら素早くそのレリーフを握りしめ「あああブッダさま〜、ブッダさま〜、ああブッダさま〜」とか言ったらセーフかね。木彫りなんて小学校の図工の授業以来やってないからきっと絶妙にヘタクソなレリーフが出来上がるだろうから、そのレリーフのありがたみのなさがイイよね。
そうこうしているうちに列車は出発し、暫くしたら車掌さんがやってきた。チャイ?コーヒー?と聞いてきて、同室のロシア系ナイスミドルが何やら口走ると車掌さんそのまま退場。おー、断っちゃったのかよ。なんでだよ。オレは茶が飲みたかったのによ。オレの意向も聞いてくれ。ロシア語わからんけど。
3回目のチャイ?コーヒー?でようやくチャイゲット。同室のナイスミドルからみかんを貰ったあたりから交流が始まり、6人中3人は英語が堪能であると判明。最初は英語が通じる安心感がよかったのだが、あんまりネイティブと喋ってるとしんどいな。こっちが全然英語堪能じゃないから。イングランド人の女性は2年間、山形の酒田で英語教師をしてたんだって。いろいろ興味深いのであるが、いかんせん語学力が。聞きたいことはあるのに聞けず*1ウズベク以前に私が英語が通じない。
いつの間にか外は凄い霧。10メートル先はもう真っ白だ。あー、電車乗ってると暇だから日記ばかり書いてしまう。ロシア語旅行会話は、もう、いい。どうせ喋れん。喋っても相手の言うことが分からん。おいどんはスパシーバとヤ・ニガバリュ・パルースキィで十分たい。よくわからんキャラになってる間に霧がはれた。
することないんで脳内で路線バスでバス代ボラれた場合のシミュレーションしてるんだけど、こういう状況で激しく怒れるキャラになってみたい。周囲が「何もそこまで怒らなくても」と狼狽えるくらい、地獄の番犬並に吠え立ててみたい。
ウズベクピラフ中。本場のは結構いけるね! クミンシードか入っているからちょっとカレー風だし。駅から市街までは並み居るタクシー運ちゃんをかわして路線タクシーに。路線タクシーとは車体はバンなんだけど決まったルートを走っており、好きなところで降りられるシステムとなっている。最初は駅前に止まってるどの路線タクシーに乗ればいいのか分からず、やや困惑しつつ歩き続けたら、さっきまで停車してた路線バスが一斉発車。焦って慌てて何台か車を止め、行く先を確認してなんとか目的地に行くのに乗れた。この間相手は誰一人として英語を介さなかったのに何の問題もなくスムーズに物事が進んだのが謎である。決まったドライバーが来るより行き当たりばったりの、こんな感じの方が断然楽しい。
レギスタンは、なんというか、言葉にならないね。今まで見たことのないタイプの建築物で大興奮。この青さは素晴らしい。あー、だめだ。色々あったのに疲れすぎて気力がない。だって駅からすぐに観光を始めちゃったから、ずーっとバックパック背負ったままだったんだもん。いまはレギスタン近くのチャイハナでお茶休憩をしてるんだけど、ここに来る途中は末期ももう近いというか、体力の限界ッ!とか、ぼく、もう疲れたよ(そして昇天)とか、そんな言葉が頭の中を渦巻いた。いい加減タクシーでも乗るかと思ったが、値段交渉してたら高い金払うくらいなら歩く、と気力復活。しかしあくまで気力のみなのでヘロヘロなのだが。
そういや通りがかりで唐突に少年に話しかけられ、私のカメラを指して「キヤノンか。自分はニコンだ」と言われ、基本的に彼はロシア語しか話さないから喋られるに任せてたら、持ち主の私ですら再現不能の早業でメモリーカードを抜かれた。メディアの種類を知りたかったらしい。いったんいなくなったのに、すぐさま踵をかえして「ペンちょうだい」。ロンプラに、ボールペンをあげると喜ばれる、とあったので念のため持ってきていたが、こんなストレートにくれと言われるとは予想だにしなかった。その後私が目的地に行って、戻るときに再び彼に会うと、まるで旧知の仲みたいな自然さで手をふられた。
あとは不良警官に「金を払えば入場禁止のミナレットを登らせてやる」と言われたり、バザールでやたらと陽気なおばちゃんの写真とったり、スパイス屋のおやじに唐辛子なめさせられたり。霊廟群では地元のおばちゃんにウズベク語を教えられたりした。基本的にみんな陽気でいい人ばかりである。
そうだ、初体験の公衆トイレは東南アジアでもインドでも経験したことのない刺激臭で、臭いを通り越して痛かった。鼻が。間違いなく人生でワーストワンだね。枯れ枝かとおもったらウンコだったし。

*1:日本語の勉強っていっても山形は方言すごいでしょ、ひょっとして山形弁喋れんの?とか。