奇跡を呼ぶ体質

私は奇跡を呼ぶ体質かもしれない。すごいよ、まじで。今日は電車内に現地の人があまりいないから、誰も話しかけてくれなくてつまんないなぁ、などと思っていたが、電車を降りた後に事は起きた。
タシケント駅に着くと早速タクシーの客引きが寄ってきてとてもウルサイ。地下鉄に乗ると警官に荷物検査されるらしいと聞いていたので出来ればトラムに乗りたかったのだが、乗り場が見当たらない*1。仕方ないので荷物検査を覚悟して地下鉄に乗り*2、目的の場所で降りると、もーそれがどこなんだか皆目見当もつかない。私の予定では、地上に出たらアミール・ティムール像が見える筈なのだが。出発前にロシア語会話勉強しているときに『ここはどこですか?』というフレーズがあって、心の底からこんなフレーズは使いたくないと思ったけれど、今まさに『ここはどこですか?』と言うシチュエーションである。なんであのフレーズ覚えてこなかったんだー!*3と、己の怠惰さを憎みつつ、近くをあるいていた美人2人組に破れかぶれになりながら声をかけてみた。
「イズヴィニーチェ…」
「エ、日本人デスカ?」
「えっ!? あっ、はい」
「ナンダー、日本語デイイヨ」
こんなことって普通あるか!? 外国で話しかけた人がたまたま日本語を話す人だった、なんて経験は人生初だぞ。しかもオーストラリアとか韓国ならともかく(どっちも行ったことないけど)、ここウズベキスタンだぞ!? すげぇ、すげぇよオレ。意味分かんねぇよ、この状況。
聞けば二人とも横浜に住んでたことがあったそうで、しかも日本で知り合って友達になったのだそうだ。二人はウズベク人とロシア人で(以下ウさんとロさん)、ウさんに「京都ハ何回行ッタコトガアル?」と聞かれ、「5回くらいかな?」と答えると「一緒ダー、私モ5回」って、たった2年間に5回?! 衝撃さめやらぬまま今度はロさんに九州は?と問われて「九州? 九州ない」と答えると「ウソ、ホントニ!? 長崎、熊本、大分、福岡…、イイトコロナノニ」と言われた。自分だってブハラ行ったことないって言ってたじゃん! そしてウズベキスタンの感想を聞かれ、もう大変気に入り、とても楽しい旅行だった、特に人がいいのに感激した、是非また来たい、と答えると二人とも喜んで、
ロさん「デモ本当ハ4月5月ガキレイデイイヨ」
ウさん「ソウダヨ、ゴールデンウイークニ来ナヨ」
ゴ、ゴールデンウイーク…。よもやウズベキスタンでその単語を耳にするとは思わなんだ。皆さん、ガイド付きツアーより断絶個人旅行ですよ! こういう奇跡的状況は、ツアーじゃなかなか起きないもんね。楽しいなぁ。面白いなぁ。
まずは空港行きのバス停の場所を確認しておき、その後観光しようと思っていて、二人にはまず現在の場所がどこなのか教えてもらって、あとは自力でバス停まで行く予定だったのだが、二人がこれからどうするのか聞いてくるので上記の計画を話すと、バス停まで案内してくれるという。本当にこの国の人はいい人ばかりだ。途中、モスクワ在住の筈のロさんの友人と偶然出くわし、ロさんと友人がきゅうかつ(漢字が出ない)を叙してるあいだ、ウさんに「オ待タセシテ、スミマセン」と言われ、友人とハグしたり頬にキスしたりし終わったロさんに「スミマセン、ロシア人ナモノデ*4」と謝られたりした。
こちらに来てからずっと気になっていたことに、ウズベク在住のロシア人のナショナリティがどうなってるのか、ということがあったので聞いてみると、やはりちゃんとウズベキスタン籍だそうだ。しかし殆どのウズベク在住ロシア人はロシア語しか話せないそうだ。それに対して若いウズベク人(人種がウズベクの人)は、もうあまりロシア語が話せないそうだ。そりゃそうだよね。生まれたとき既にソ連じゃなくなってたんだから。一昨日会った気のいい大学生もロシア語はすこししか分からないって言ってたなぁ。私がこちらについた当初、挨拶言葉のたぐいは全てロシア語を使っていたのだが、サマルカンドでおばちゃんにウズベク語での挨拶を教えられて以来、極力挨拶はウズベク語で行うように変えた。やはりロシア語が分かると言っても、自国の言葉で挨拶されたらずっと嬉しいよね。
彼女たちには博物館の場所まで教えてもらって別れ、博物館には向かったものの閉館15分前だったので入館はあきらめ、日本人捕虜の建てたオペラハウスだけ見て観光終了。タシケントの若者に人気のトルコ系ファストフード店で時間をつぶしてるところ。BGMに英語の曲かけてる店は初めてだ。というかこっちきて英語の曲初めて耳にした。マルーン5なんかかかってる。そしてタシケントにもゴスロリっているのね。日本ほどのゴスロリっぷりではないけど、十分そのカテゴリーに入るよ。で地が濃いめの顔だからアイメイクをやりすぎなくてもちゃんとゴスロリナチュラルにゴスロリだよ。可愛かったので写真を撮らせてもらいたかったが、都会のおしゃれ女子が気のいいバザールのおばちゃんみたいにノリノリで応じてくれるとは思わず、あきらめた。
タイを旅行した折りに、きっと美味しくないと承知していながらも、食べたら本当に不味いショートケーキを食べた経験があるにもかかわらず、今回も果敢に挑戦してしまった。だってタシケントの若者に人気なだけに、ケーキの類があったんだもん。絶対後悔するって分かっていたけど自分を止められなかったの! しかし思ったより悪い味ではなかった。案外食べられたよ。ケーキより普通のクッキーの方が美味しかったけど。

*1:ていうか雪の中、探し回りたくなかった

*2:ちなみに荷物検査は免れられた。

*3:バックパックを紐解けば本は出せるのだが、雪降ってたからねえ。面倒くさいじゃん

*4:ロシア人のこういった親愛の表現は比較的熱烈なので。