情が薄いのか

手紙を書くのが苦手です。旅先でお世話になった人々に。なんというか正直言うと、別に一期一会のままでいいかな、ってね。しかし向こうからメールが来てしまったのだ! あの、電車の中で「英語の勉強をしたい」と言って私に話しかけてきた気のいい大学生から。確かに、あのとき電車の中で話しかけられて楽しかった。しかしだね、楽しかったのは話しかけられたという状況全体であって、話の内容ではない。まー、会話が弾みようがなかったからね。で、今回来たメールも、できれば今後も英語の勉強がしたいからメールで相手をしてほしい、という主旨なのである。つまり、何か書きたい事があるからメールを送ってきているわけではなく、英語を使う機会をつくりたいというわけ。
なにを書きゃいいっちゅーねん。
分からん。なにを書けばいいのか分からん。どうにかしてくれ、と煩悶半分、現実逃避半分で既に3日が経った。もう、今日を逃したらきっと彼にレスを送る事はあるまい。せ、世話になったのに! タクシーおごってもらったというのに、私はなんという人非人なのだ。非情なり。うちのやつに向かって「ちょっと、代わりに文章つくってよ。編集者でしょ?」と言ってみたらば「ライターじゃないし」と断られた。私なんか文章読む係だし。人の間違い見つける係だし。だったらライターじゃなくても編集者の方がまだ文章書く機会あるじゃんねぇ。実際書いてるんだしさぁ、多少は。ほんとにケチだね。
もしうちのやつが代わりに文章をつくってくれたら。いきなり乙女になって『あのときは本当に楽しかったわ☆ ウフッ!』とか書いて、普段見せない意外な一面をかいま見せてくれたら面白いのにな。おー、この人こういうこともできるんだ、ってさ。
うちのやつの意外な一面と言えば、今日観に行ったギエムのボレロ。やつはギエムもボレロも初めて観たのだが、随分と感激したらしく(実際素晴らしかった)、観終わった後に「あの中に加わりたくなった。自分も(ギエムに)ひれ伏したくなった」とか「(ギエムに)死ねと言われたら死ぬ、みたいな」などと言っていた。よっぽど気に入ったのだろうが、ちょっとボレロの感想としては新鮮であった。
あー、また現実逃避しちゃったよ。どーすりゃいいんだ、私は。なにを書けばいいんですか? 人とコミュニケーションをとるのが不得手なので『当たり障りなく、うまくあしらう』みたいな技術がありません。言葉を額面通りにしか使えないというか。それに英語もとても苦手です。ストレスでございます。ゴーストライターが欲しいよう。