ビンタン島にて

シンガポールから船に乗ってインドネシアに入国。ビンタン島へ。ここはまださほど開発されていないリゾート地なのだが、私はなぜリゾートに来てしまうのだろうか、海に入ったところでなにをしたらいいか分からん人間のクセに。実際の所、海入ってなにすんのさ。泳ぐの? 延々と?? なにが面白いのか分からん。ビーチバレー? 動くの苦手なんだよ。呼吸が乱れたり、苦しいじゃん。日焼けもいやだし。きれいな色の海を見るのは好きだが、ここの海はさほどきれいじゃない。本当にすることがない。なにをしたらいいのか分からない。
ということでガイドブックを繙き、マングローブ・エコ・ツアーに参加。これはなかなか面白かった。小舟に乗ってマングローブの生い茂った川をゆくのだが、気安く参加したら頭上の木の枝に猛毒を持ったマングローブ蛇がいたりして安全面に不安が。見慣れない景色と蛇のおかげで実際以上に秘境に来た感覚で楽しかった。川の近くには漁師の村があり、そこんところの子供たちは学校に行く事もなく昔ながらの生活をしているとか。学校に行かない子どもが世界中たくさんいることくらいは分かっているものの、実際に「ここの子どもたちは学校に行きません」といわれるととても不思議な感覚。日本の常識と彼らの常識はまったく異なっていて、なのにこんなに近くに、一緒に存在している、というか、お互いほとんど別世界に生きているのに、ほんの一瞬だけ人生がクロスしたような、そんな感じがして不思議な感覚があり面白い。
そんなこんなでマングローブを見学し、ホテルに戻ると最早やれることは皆無。浜辺を少々散歩し、ますますやれることがなくなって、じゃビールでも飲むか、とホテルのプールサイドのバーで、プール遊びに興じる人々を見ながら飲酒。チュニジアでもウズベキスタンでも見掛けたけど、このプールサイドでも雀を見掛けた。雀ってのは世界中どこにでもいるんだなぁ、と眺めていたら、発情期だったのかなんだか知らんが一羽がもう一羽をストーカー並の執念でしつこく追いかけ回しつつギチギチ鳴いていてあんまり可愛くなかった。ちょっと面白かったけど。
人はどのようにして水の中で遊ぶのか学ぼうと、プールで遊んでいる人々を観察。ボール投げたりしてんだけどさ、それは陸の上でやるんじゃだめなの? 目線を別の方向にやるといちゃついている連中が。お〜お〜、こんなとこでまで、お熱いねぇ、と心中で冷やかそうと思っていたら男の背中に本気の彫り物が。中国系のやくざかなにかだろうか。とっさに目線を発情中の雀に移し、連中を冷やかしているフリをした。雀を冷やかす人間ってのも大分アタマがおかしい感じで彫り物並に怖いけど。
夕食をとったらますますすることがなくなり、結局いまは部屋でニンテンドーDS。なんでこんなところにRPGなんか持ってくるのだ、うちのやつよ! ゲームに手を出すと寝られなくなるのでなるべく手を出さないように生きているというのに。そんでもって私があんまりゲームをやりすぎると売っちゃうんだぜ、あいつ。去年スイスに行ったときもそうだった。スーパーマリオを持ってこられて私があんまりゲームをやりすぎるものだから、帰国して早々に売り払われた。酷な人間よ。人をゲームに夢中にさせておいて取り上げるとは。売り払われる前に全部終わらせなければ。あぁ、私がいま無職であれば、帰国したら寝る間も惜しんでゲームをやりつくすのだが。こんなことになるなら今度うちのやつがいない間にDS本体を売り払ってやろうかな。