アラーのお膝元で失言

ラッフルズホテルからチャイナタウンのホテルに居を移し、さっそく観光。印鑑屋があり、購入するとその場で名前を彫ってくれるときいて欲しくなったが、よく考えると印鑑なんかまったく必要ないことに気付いてやめた。貧乏人に無駄な出費など許されない。
シンガポールはほかの東南アジアの国と違って観光客を食い物にする商売の人間がおらず、たいへん旅行がしやすい。バンコクではちょっと歩くとすぐにトゥクトゥクのオヤジに進行を妨げられたものであるが、そんなおっさんは皆無だもんね。上記の印鑑にもちゃんと値札がついていて、さすがシンガポール、ぼったくったりしないんだ、と感心しながら見ていると、店のオヤジが突然値下げをしてきた。こっちはまだ何も言ってないのに。やっぱ値下げ交渉が利くんじゃん。シンガポールもやはり東南アジアの国であったか。
電車に乗ってリトルインディアに移動。たしかにインド人だらけだ、この街は。ちゃんと皆、サリーとかパンジャビドレス着てるし。本物のインドと違うところはウンコが落ちてないところと牛がいないところか。インドと言うには清潔過ぎるのである。なんでか知らんがシンガポールには南インドの人が多いらしく、ミールスを出す店多数。その内の一軒に入店しミールスを注文すると、出されたのは料理のみでスプーンもフォークもナイフもない。おー、本場。手で食えってか? いや〜、しかし自分でも驚いたけど、インド人がどのようにして手で食べているのか知っているにも拘わらず、いざ目の前にしてみるとどこからどう手を付けたらいいのか皆目分からん。うろたえ困惑し、おそるおそる手をつけてみたら一瞬で右手全体がカレーまみれに。周囲のインド人たちは、それはそれはスマートに食べていると言うのに。難しいもんだ。しかしこれで壁を一つこえたぞ、今度インドに行ったら迷わず手で食べてやろう、などと思っていたら、店の隅っこの方にフォークやらカトラリー類が置いてあった。どうやら使いたい人間だけ自主的にとりに行くシステムであったらしい。早く気付いていたら普通に食べられたのに。
リトルインディアの次はアラブストリートに行く予定であったが、本日シンガポールはたいへんな熱気で、とてもじゃないけど歩いていられない。というわけで涼しくなるまで一旦ホテルに退却し、夜になってからアラブストリートに出掛けた。
やー、シンガポールって、なかなか面白いのね。アラブストリートのあたりはまったくの別世界であったよ。これまでのシンガポールのイメージと言うと、華僑の国、ゴミがない、買い物が好きな人が主に出掛ける国、などであったのだが、こんないろんな人種が、それぞれ自分たちの分化を守ったまま生活している国だとはまったく知らなかった。アラブストリートの人々も結構普通にアラブっぽい服を着ているし、時間になったらコーランが流れた。もう夜だったので店はほとんど閉店していたので、モスクの前あたりをぶらぶらし、近くのレストランでアラブ風の料理を食べただけだがそれでも充分楽しかった。店の外のテーブル席につき、ムルタバとか言ったかな? アラブ風のチヂミみたいな料理を注文すると、飲み物はどうするか、と問われ「ビールありますか?」と聞いたらモスクの方を指さしつつ困惑気味に、モスクの近くなんだからアルコールなんかあるわけないよ、という主旨の事を言われた。あー!ごめんなさいごめんなさい、ほんと私がバカでした、と平身低頭。イスラム教徒は酒を飲まんのを忘れていた。チュニジアでビールだと思って飲んだのもノンアルコールビールだったもんなぁ。しかしこの暑さに湿度、冷えたビール飲んだらさぞかし旨いだろうに、この人達酒が飲めないのだなぁ。私はイスラム教徒にはなれそうもない。
今回の旅行では、可能であれば電車でジョホールバルに行ったり、ナイトサファリに行ったりもしたかったのだが、さすがに正味4日の行程では不可能であった。シンガポールは、なにがどういいかというと非常に難しいのであるけれど、日本人としては非常に楽に旅行ができて、かつ異国情緒も楽しめてなかなかに面白い国であったと思う。短い期間で海外旅行をするなら結構いい国だ。また来てもいいな、と思いつつホテルへ。明日は早朝6時のフライトで日本に発つ予定である。ちゃんと起きれるだろうか。不安。