リラックス用の音楽

先日あまり親しくない知人が家に来た際に、棚に置いてあったグレン・グールドのCDを見て「胎教用ですよね」と言われた。胎教用…。普段クラシックなんて聴く習慣なんかないくせに、バカみたいに胎児の能力開発!みたいな感じでクラシックを聴くと思われたのか。ちなみに胎教の類いは一切行っていない。理由は面倒くさいから。出産経験のある友人に、妊娠期間中にスキルアップをしておくとよい、と言われたにも関わらず何もやれていない私が、なぜ自分のためですらない努力ができるとお思いか。だいたい胎教なんて意味あるのかよ。分からん。ちなみに百科事典の『社会性昆虫』の項目の、『奴隷使役アリ』の章をお腹に向かって読んでやったことはある。なぜかって、面白いから。
最近では胎児の動きが、「胎動」という言葉でイメージされるようなものではなく、私の腹部にひそんだ人間が暴れている、というような感じになってきた。やー、もう激しいのなんの。仰向けになってお腹を観察していると衝撃的な波打ち状態。胎児じゃなくて赤ちゃんだな、もう。きっと今生まれてきても、もはやあまり問題あるまい。実際今度の木曜で正産期に入るし。
ということで入院準備をしているのだが、持ち物リストに「リラックス用のCD」とある。これまでの自身を振り返ると、だいたい体調が辛くて寝込んでいる際に好んで聴く音楽はモーツァルトのレクイエム。陰気な性格なんでね。今回もこれにするか、と一瞬思ったが、レクイエムって縁起悪すぎだろう。ヴェルディのレクイエムだったらちょっとテンションあがるか? やー、やっぱレクイエムはダメだろう。ということでどのCDを持って行くか悩み中。候補は『トリスタンとイゾルデ』とか『蝶々夫人』とか、オペラにするかなー、などと思っているのだが、ワーグナーを聴いてリラックスするか? ピンカートンむかつく!などと言いながら、そのむかつきエネルギーを出産に回せばいいのだろうか。リラックスツールは音楽に限らないらしいので、とりあえず数年前にニューヨークの空港で買った数独の冊子は入院用バッグに入れておいたが、陣痛中に数独なんてやれるものだろうか。リラックスツール選びが若干ストレス。